「無印良品」を運営する良品計画(東京都/堂前宣夫社長)は4月12日、2024年8月期の第2四半期の連結決算を発表した。上記決算では国内の既存店好調を背景に売上高が大きく伸長し、各段階利益も大幅増益を達成した。良品計画が発表した業績の概要と背景要因、下期の取り組みをレポートする。

良品計画の堂前宣夫社長(写真左)

化粧品をはじめ
生活雑貨が好調

 良品計画の24年8月期上期の連結決算は、営業収益が3198億円(対前年同期比112.9%)、営業利益が240億円(同236.8%)、経常利益が 241億円(同228.1%)、親会社株主に帰属する四半期純利益が157億円(同214.4%)と、増収、大幅な増益だった。

 国別に見ると、国内事業の営業収益は1849億円(同110.1%)、営業利益は169億円(同210.4%)。海外事業も営業収益が1349億円(同117.0%)、営業利益が210億円(同140.6%)と、いずれも増収増益を達成している。

 好調を支えたのが、国内既存店の売上高増だ。アプリ「MUJI passport」やネットストア「MUJI.net」に登録する会員を対象として、対象商品が10%オフとなる「無印良品週間」を3月15日から25日まで開催、生活雑貨を中心に投入した新商品の販売も好調に推移した。その結果、客数は同94.6.%とやや伸び悩んだもの、客単価は110.4%、既存店売上高は104.4%となった。

 商品別に見ると、衣服・雑貨は対前年同期で99.2%。比0.8%減。背景には在庫管理のミスにより、冬物の在庫が一部不足したことが関わっている。一方、生活雑貨についてはスキンケアや日用消耗品などを中心に108.2%(同上)、食品も103.8%(同上)だった。
 とくにスキンケアをはじめとする化粧品については、ほかのメーカーと比べて広告宣伝やプロモーションの費用を抑え、適正な価格を維持したことが消費者からの支持へとつながった。

 一方の海外事業は営業収益が1349億円(同117.0%)、営業利益が210億円(同140.6%)。
とくに順調だったのが東アジア地域で、営業収益は958億円(同116.9%)、営業利益が162億円(同127.4%)。国別に見ると、中国大陸、台湾、香港、韓国がいずれも増収増益だった。24年2月、中国・北京にオープンした旗艦店は約1512坪と中国国内の店舗で最大の営業面積を誇り、売上増に寄与した。

 そのほか、国内では「無印良品500 西武入間ぺぺ」(24年2月オープン)など、郊外を中心に計34店舗を出店。海外では北京を含め計34店を出店した。国内外の新規出店が売上を底支えしたかたちだ。
 24年8月期通期の業績予想では、営業収益が同110.1%となる6400億円、営業利益が同144.9%となる480億円を見込む。

下半期もスキンケアや日用品など、生活雑貨の販売に注力する

地域特性に合わせた
商品提供めざす

 良品計画では21年7月に発表した中期経営計画で、2030年までのビジョンとして「日常生活の基本を支える最強で最良の基本商品群、その調達の生産体制を完成する」という項目を掲げている。

 国内では上半期、スキンケアや日用消耗品が好調だったことから、下半期は「スキンケア」「日用品」「日常の服」に注力し、「日常生活の基本を支える最強で最良の基本商品群」というビジョンの実現にアプローチする。とくに、食品スーパー横にある600坪ほどの店舗で、これらカテゴリの商品を中心的に展開し、日常的な利用度を高めていくという。

 海外では中国大陸での出店を継続し、既存店の成長体制を強化することで、同大陸内での成長を図る。
 また下半期には、米国・ニューヨーク、フランス・パリへの旗艦店の出店も予定する。これまで、米国やフランスに出店した店舗は売場面積平均80坪前後と、国内店舗の半分にも満たないものが大半だった。
 堂前社長は「我々は何者でどういった価値を提供する会社なのか、海外のお客さまにしっかりと伝えることから始めて、その上で事業を拡大していくという順番を意識したい」と話す。

 これらの取り組みを通じた先にめざすのは、価格を抑えた商品を世界中で同時に販売する「グローバルサプライチェーンモデル」から、地域特性に合わせた商品を提供する「地産地消サプライチェーンモデル」への転換だ。「海外で商品開発を行う中で、たとえば家一つをとっても、天井の高さ、ドアの大きさなどすべてのパーツに地域差があることを知った。今後は各国ないし各地で企画開発し、生産、消費へとつなげるビジネスモデルが必要だ」と堂前社長は言う。

  「地産地消サプライチェーンモデル」については、まず地域差が大きい食品領域からスタートし、徐々に他のカテゴリーにも領域を広げていく予定。衣服など、人間の労働力に依存する割合が高い労働集約型の産業については、引き続きグローバルサプライチェーンのモデルを適用していくという。

 良品計画は21年に掲げた中期経営計画で「ESG経営のトップランナーとなり、日常生活の基本を正しく支える企業、地域課題を解決し地域に貢献する企業」をめざすという目標を掲げている。とくに地域課題の解決という観点に向けて、下期は国内、海外事業ともにどう事業が進展していくのかに注目したい。

著者:松岡 瑛理