小さな車体に元気いっぱいのエンジンで峠を駆け抜ける。そんなボーイズレーサーのイメージを体現したのが、千葉県の「プリンスガレージかとり」が所有する510ブルだ。各部に手を入れられた本個体は、旧車の魅力を損なうことなく、 走りの刺激や楽しさを、ハンドルを握るオーナーに伝えてくれる。

走りを意識したボーイズレーサー。

外観はフロントにリップスポイラーを装着している以外は、ストックを保っている。サスペンションは車高調をセットし、それに合わせてフルピロ化。フロントはシェルケースの加工でR32キャリパーを装着している

コンパクトなスポーツセダンとして新車当時から人気の3代目ブルーバード。その型式から「510」と呼ばれ、人気を博した。スクエアなボディデザインに四輪独立懸架の足回りをもち、上級モデルはパワフルなエンジンを搭載し、SSS(スーパースポーツセダン)と呼ばれるホットバージョンも用意された。

またブルーバードは海外にも積極的に輸出され、ラリーなどでも活躍。特にアメリカではZとともに「DATSUN 510(FIVE‐TEN)」の愛称で親しまれ、今でも多くのファンが世界中に存在する。

ボディバリエーションは2ドア、4ドアのセダンに加えて、ドアクーペ、ワゴン、バンなどがラインナップされた。中でもドアクーペはスタイリッシュなルーフデザインと専用のテールランプをもち、特に北米で人気を博した。

ここに紹介するのは、モデル末期に1800ccのL18型エンジンが搭載されたトップグレードの2ドアクーペ1800SSS。北米でも人気のモデルをベースに街中でも快適に走行できるよう各部をモディファイドした一台だ。

エンジンはL18をベースに排気量を2リッターまでスープアップ。通常L18の排気量アップにはノーマルクランクにラージピストンをビッグボア仕様と、クランク交換をしたロングストローククランク仕様が存在する。このエンジンは街乗りもしやすいトルクフルなロングストローク仕様となっているそうだ。これに78度カムとウェーバーのφ48をチョイスしている。

組み合わされるトランスミッションは、なんとホンダS2000用の6速マニュアルで、これにLSDを組み込んだR180デフを使って駆動系全体を強化している。

見た目こそどこにでもいそうな車高を下げた510クーペだが、中身は足回りを含めてトータルでアップデート。半世紀前の車両とは思えないほど、キビキビと走ることができるマシンに仕上がった。

2ドアセダンと比べると、Cピラーが大きく傾斜したクーペ独特のルーフラインが大きな特徴。またリアの通称「一文字テール」もクーペのみのディテール。ナンバーの右側には1800SSSの他にCoupeのバッジが備わる

1970 BLUE BIRD 1800 SSS|北米でも人気のモデルを駆動性をアップデート。

見た目はキャブをウェーバーに交換した程度だが、徹底して中身に手を入れ、排気量は2リッターにスープアップ。カムは78°で、キャブレターはウェーバーのφ48。組み合わされるトランスミッションはS2000用の6速マニュアルだ。

トランク内にはガソリンタンク手前に巨大なアンプを設置。右側に見えるのは燃料用電磁ポンプ。

リアシート後部やドアにスピーカーを設置。前オーナーのこだわりでオーディオも充実している。

ダッシュはセンターコンソールにキルスイッチが追加されていたり、追加メーターが装着されているなど、かなりレーシーな雰囲気。またドアパネル前端にはスピーカーがマウントされる。

タコメーターはスタック製クロノトロニックに交換。往年のスミス製を再現しつつ、最新の電子制御となったステッピングモーター式だ。

ダッシュセンターにはアルミ板を装着し、右からNISMOの油圧、大森の水温、NISMOの油温の各ゲージを装着する。

【SPEC】
●エンジン形式:L18型改(直列4気筒OHC) ●総排気量:2000cc ●トランスミッション:6速マニュアル ●リアデフ:R180 ●サスペンション:フルタップ車高調 ●ブレーキ:R32用4potキャリパー(F) ●ホイール:ワタナベ8スポーク(F&R) ●タイヤ:POTENZA RE-01R(F&R)185/60-14

【DATA】
プリンスガレージかとり
〒287-0023 千葉県香取市伊地山23
TEL0478-58-1223
営業時間:10:00〜19:00
定休日:火・水曜日

※情報は取材当時のものです。

(出典/別冊Lightning Vol.231「VINTAGE AUTO 快適旧車のススメ。」)

著者:Lightning 編集部