焙煎機の規模はそこまで大きなものじゃない。小ロット焙煎量ながらもインディペンデントに活動をする店舗、マイクロロースタリーが近年増えている。目指す味があるから自分でやる。まさに地元に愛される自家焙煎店である。府中にある「日伸珈琲beans」は、実家のフロアをクリーニング店とシェアしてスタート。クリーニングに来た客が焙煎の香りにつられて……なんて漫画のような展開が日常にある。

美味しい期間が続くよう低温でじっくり焙煎する。

隣のクリーニング店は、杉峯さんのお母さんが運営。お互い助け合って、好きな仕事をする。理想の環境と言えるかもしれない

外観からしてユニークな自家焙煎店である。元々は店主・杉峯さんの地元である府中で営んでいた実家の酒店。その半分を杉峯さんのコーヒー豆販売店、もう半分は杉峯さんの母のクリーニング店に。ちょうど2等分。看板も見ての通り2等分である。

店主の杉峯さんは脱サラ後、 3年間独学でコーヒーの勉学に励みコーヒーマイスターの資格も取得。満を持して開業したのは2017年の5月だ。スペシャルティコーヒーを地元府中で、そこまで高くない価格帯で広めていくというテーマがある。そのためには実家で始める強みを存分に生かした。

オランダ製のギーセンの焙煎機は、蓄熱性が高く、ダンパーが無段階で調整可能なので味づくりに幅をもたせられるのが特徴

初期投資を抑えて、内装はシンプルに。焙煎機だけは惜しまずにお金をかけたが、それ以外は質の高いコーヒーをつくることに注力した。ダンパーを搭載したギーセンの焙煎機は、蓄熱性が高く余熱を活かした焙煎ができる。じっくり低温で焼き上げるのが杉峯さんのスタイルだ。

火をガンガン当てた焙煎ではなく、じっくりと熱を入れて、柔らかい味わいになるように。短時間で焼き上げるとガツンとした味になる反面、美味しい状態が長く続かない。「お客さまはす ぐに飲むとは限らないので」

クリーニングに来たお客さんはさぞかしビックリするのでは? と質問すると杉峯さんは笑いながら頷く。

「最初は驚きます。でも、香りに誘われて買って帰るパターンも。そんな計算もちょっとはあるかも……しれません(笑)」

「自家焙煎でオリジナリティを出して勝負をしたかった」と杉峯さん。ブレンドは、豆ごとに焙煎して配合する焙煎後のアフターミックス ドリップバッグは5個ずつをラッピングされた状態で ブラジルショコラの自家焙煎豆でこしらえたコーヒーゼリーは隠れた人気アイテム

人気のコーヒー豆を紹介!

[豆の種類]
シングルオリジン 10種類
ブレンド 4種類
中米、南米、アジア、アフリカ、 世界中の豆をバランスよくセレクト

[抽出方法]
テイクアウトなし

[焙煎機]
ギーセン/半熱風式/2.5kg釜

【ブレンド】にっしんブレンド

店舗の定番。深煎り中心のブレンド構成だが、 焙煎度の異なるフルーティな豆を隠し味に仕 込んだアフターミックス。コロンビアがコク を与えてくれるが、後味すっきり。

200g/1,350円
産地:ブラジル、コロンビア、イルガチェフェ
焙煎:ハイ〜フルシティ
精製方法:ミックス
香り:ほどよく
酸味:多少あり
コク:しっかり
後味:すっきり

【ブレンド】たまりばブレンド

悠々と流れる多摩川(タマ・リバー)と憩い の場(溜まり場)をイメージした季節のブレ ンド。中深煎り中心の構成。口当たりのよい 中に、微かなマンデリンの苦味も感じられる。

200g/1,550円
産地:ブラジル、コスタリカ、マンデリン、他
焙煎:シティ〜フルシティ
精製方法:ミックス
香り:ナッツ系
酸味:少なめ
コク:しつこくない
後味:苦味がほのかに

【シングルオリジン】プレミアムショコラ

ブレンドでも多用する店舗の基本。ブラジル らしいナッツフレーバーとチョコレートを思 わせるようなしっとりとした甘味と苦味。心 地よい苦味があるが、舌の上に甘味が残る。

200g/1,550円
産地:ブラジル
焙煎:フルシティ
精製方法:ナチュラル
香り:香ばしい
酸味:控えめ
コク:軽め
後味:甘味が残る

【DATA】
日伸珈琲beans(ニッシンコーヒービーンズ)
住所:東京都府中市住吉町4-48-19
連絡先:TEL042-368-7990
営業時間:平日11:00~20:00 土日祝10:00~20:00
定休日:毎週水曜日、第3木曜日
駐車場:なし
公式HP : https://www.nisshin-coffeebeans.com/
SNS:LINE@ocu1054q
席数:なし
ホールセール:あり
豆販売:あり
豆通販:あり
テイクアウト:なし
デカフェ:あり
ドリップバッグ:あり
セミナー:予定あり
器具販売:オーダー制

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/別冊Lightning Vol.215「東京コーヒーロースターズ」)

著者:Lightning 編集部