東京都産業労働局が、都内の中小企業を対象に行った賃金や労働時間などについての調査結果(令和5年度版)を公表しました。
大企業の各種調査についてはさまざまな機会で公表されています。
しかし、中小企業は全企業のうち非常に多い割合を占めるにもかかわらず、調査結果が公表されることが少ない状況です。
この調査結果は、中小企業が同一規模の企業と賃金水準や労働時間の比較が行える資料となるでしょう。

調査内容
【毎年調査】
・賃金事情(賃金、賞与、諸手当)
・平均賃金(全雇用者、産業別、男女別)
・実在者賃金(年齢別、学歴別)
・モデル賃金(モデル賃金、初任給)
【隔年調査】
・労働時間(労働時間、休憩時間)
・休日、休暇(年間休日、有休)
調査対象
・東京都内の従業者数10〜299人の中小企業876社
・13業種

今回は隔年で調査されている「労働時間」と「休日、休暇」について見ていきます。

労働時間について

業種別の平均年間所定労働時間では「運輸業、郵便業」「建設業」「生活関連サービス業、娯楽業」が上位3業種となりました。

全産業平均の所定労働時間 (単位 時間:分)
全業種の所定労働時間
平均所定労働時間 7:46
平均休憩時間 1:02
平均週所定労働時間 39:03
平均年間所定労働時間 1930:20

業種別の平均年間所定労働時間 (単位 時間:分)
業種別の平均年間所定労働時間
運輸業、郵便業 1985:23
建設業 1973:11 生活関連サービス業、娯楽業 1961:10
宿泊業、飲食サービス業 1956:44
卸売業、小売業 1951:27
医療、福祉 1947:50
サービス業(他に分類されないもの) 1938:52
製造業 1933:11
学術研究、専門・技術サービス業 1883:17
情報通信業 1862:58
金融業、保険業 1862:10
不動産業、物品賃貸業 1856:52
教育、学習支援業(学校教育を除く) 1827:34

所定外実労働時間
2023年7月の1か月間に実際に労務に従事した時間のうち、所定労働時間外にあたる時間を集計した結果です。
女性に比べて男性の方が、平均の所定外実労働時間は6時間以上長くなっています。
(単位 時間:分)

所定外実労働時間
男性平均14:40
女性平均8:28
全体平均11:54

業種別の所定外実労働時間
業種別の所定外実労働時間では、男性が「建設業」「金融業、保険業」「運輸業、郵便業」、女性では「教育、学習支援業(学校教育を除く)」「情報通信業」「学術研究、専門・技術サービス業」が上位3業種となりました。(2023年7月集計)
昨今、「運輸業」「建設業」などで人出不足の問題が取沙汰されており、今回の調査とも関係するものと考えられます。
(単位 時間:分)

業種別の所定外実労働時間
【男性】
建設業 21:41
金融業、保険業 17:54
運輸業、郵便業 17:42
医療、福祉 15:43
情報通信業 15:28
製造業 15:27
教育、学習支援業(学校教育を除く) 15:12
調査産業計 14:40
不動産業、物品賃貸業 13:55
学術研究、専門・技術サービス業 13:54
卸売業、小売業 12:20
サービス業(他に分類されないもの) 11:32
宿泊業、飲食サービス業 10:17
生活関連サービス業、娯楽業 7:07

【女性】
教育、学習支援業(学校教育を除く) 14:25
情報通信業 13:44
学術研究、専門・技術サービス業 11:23
不動産業、物品賃貸業 11:09
金融業、保険業 10:29
医療、福祉 10:17
建設業 8:54
調査産業計 8:28
製造業 8:25
宿泊業、飲食サービス業 6:41
卸売業、小売業 6:06
運輸業、郵便業 6:03
生活関連サービス業、娯楽業 5:26
サービス業(他に分類されないもの) 4:14

休日、休暇について

年間休日日数 (単位 日)
年間休日日数
全業種
業種別の年間休日日数
年間休日日数が最大となった「情報通信業」と、最小の「運輸業、郵便業」では年間休日日数に18日の開きがありました。
業種の特性的にも「運輸業、郵便業」は休日が少ない傾向が見受けられます。
(単位 日)

年間休日日数
情報通信業 123.7
学術研究、専門・技術サービス業 122.5
金融業、保険業 121.2
不動産業、物品賃貸業 118.8
製造業 118.6
医療、福祉 118.0
調査産業計 115.1
建設業 113.0
サービス業(他に分類されないもの) 112.7
生活関連サービス業、娯楽業 111.2
卸売業、小売業 110.7
宿泊業、飲食サービス業 108.7
教育、学習支援業(学校教育を除く) 108.1
運輸業、郵便業 105.7

まとめ

中小企業ですぐに労働環境を改善することは難しい問題です。
しかし、2024年4月からは時間外労働の上限規制も始まるため、今後の改善は喫緊の課題となるでしょう。
また、人出不足は社会全体の課題となってくることも考えると、自社の労働環境の改善が人材採用において重要ではないでしょうか。
自社の労働環境の改善にこの資料を活用していっていただければと考えます。

<参考>
東京都産業労働局「中小企業の賃金事業(令和5年度版)」