芸能活動を再開した小阪さん(撮影/高野楓菜)

 今から20年前。18歳でデビューし、瞬く間に大人気となったグラビアアイドルがいた。小阪由佳さん(38)だ。2004年に「ミスマガジングランプリ」を受賞し、笑うと三日月の形になる特徴的な目元と癒やし系のキャラクターが話題になり、バラエティー番組に引っ張りだこに。多忙な日々を送っていたが、23歳の時にうつ病を発症して芸能界から姿を消した。体重が20キロ増えるなど紆余曲折を経て15年――。芸能活動を再開した小阪さんを直撃した。

――昨年11月に芸能界復帰を発表しました。

 決断したのは昨年9月ぐらいですね。芸能事務所「cheer  lead」を始めて、あっという間に1年半が経っていました。所属する5人のタレントを売り込むために、各所に挨拶回りや、SNSで発信するなど営業活動をするなかで、周りに「自分がタレントで出ちゃったほうが(宣伝効果として)いいんじゃない?」と言われて。正直凄く怖かったです。すぐに結論は出せませんでした。一度引退しましたし、表舞台に戻ることは考えていなかったので。ただ、「やれることは全部やったほうがいい」とタレントに伝えているのに、自分は使えるものを使っていないという思いがありました。ついてきてくれるタレントのためにも覚悟を決めなきゃと。

■視聴者に驚きと幸せを

――具体的にどのような活動をしていきたいと考えていますか。

 バラエティーで戦ってきた人間なので、「相席食堂」(朝日放送テレビ)などの番組に出たい思いはあります。でも、簡単に出られるほど甘い世界ではないですし需要があってこそなので、番組、媒体にこだわりはありません。どう立ち振る舞えば喜んでもらえる企画を作れるかなと、今は挑戦心がわいてきています。テレビだけでなくYouTubeでも発信できる時代です。昨年11月にYouTubeチャンネルを開設したので、普段は女の子がなかなか行けない場所に行ったり、視聴者に驚きと幸せを与えたりしたいです。

復帰後はグラビアのオファーもあったという(撮影/高野楓菜)

――復帰後はグラビアのオファーも来ましたか?

 いただきました。ありがたい話なんですけど、書籍やDVD化した時の売れ高を考えると自信がなくて……。「芸能界に復帰して何を言っているんだ」という話ですが(笑)。ネットで簡単に画像が見られる時代になり、私がグラビアをしていた20年前に比べて商品価値が下がっている。私の体に価値がないとかではなく、PV数は稼げても物販で買わせるまでいける気がしない。「きれいなお姉さんブーム」で、私は人妻なのでターゲット層があるとは言われるけど、「ほかも素敵な方がたくさんいるからなあ」と思ってしまいます(笑)。

■焦りはありました

――改めて18歳にデビューして5年間の芸能生活はいかがだったですか。

 突然始まって、突然終わって。助走なく短距離走で駆け抜けた感じですね。私は下積みと呼べる時代がなく、突然売れたので自分の武器が何もない。仕事のスケジュールがどんどん埋まっていくので、毎日どうしようと悩んでいました。何も取り柄がない自分ができることを必死に考えたら、「笑った顔がかわいい」とおっしゃっていただくことが多かったので、ずっと笑っていようと。シリアスな状況以外は絶対に真顔を見せないと決めていました。裏を返せば、これぐらいしかできることがなかったです。

――人気絶頂だった時に葛藤を抱えていたんですね。

 葛藤がない瞬間はなかったですね。ずっと笑っていることで疲れるとかはないんですよ。仕事は楽しかったですし、必要とされるのはありがたいですから。ただ、笑うことしかできない自分は商品価値として低いので、「このままではまずい」という危機感は常に持っていました。年齢を重ねてグラビアの仕事が長続きするわけではないですし、トークや演技で立ち位置を確立しないと芸能界で需要がなくなっていく。何とかしたいけど、どうしていいかわからない。焦りはありました。

――23歳の時に電撃引退を決断します。

 うつ病になってしまって。今、振り返ると自分を追い込みすぎた部分がありました。仕事で商品や趣味を紹介する時に、自分の感性に合わないものも肯定しなきゃいけない。当たり前のことなのですが、若かったので心のバランスが取れなくて。私は高校時代に化粧をしなかったので当時はメイク道具に関心がなかったのですが、美容の話題になると「かわいい!」と盛り上げて嘘の自分で塗り固めていた。イメージを大事にして人間関係でも素を出さなかったので、孤独でしたね。当時の自分に「もう少し楽に生きたほうがいいよ」と言ってあげたいです。真面目すぎたのかも(笑)。

■体が驚いて

――体重が20キロ増えたことも話題になりました。

 人間関係で悩んでいる時に、「太ったほうが話題になる」と言われて。当時は精神的に不安定だったので冷静な判断ができませんでした。芸能界で仕事をしている時はほとんどご飯を食べていなかったので、一気に食べると体が驚いて吐いちゃう。不思議な感覚なんですけど、「早くやせさせてくれ」と思いながら食べ続けて3カ月で20キロ太りました。「元の体形に戻らない」と周りに言われましたが、人生を切り替えようと冷静に考えたら不安はなかったですね。人生は自分一人でどうにもできないことが大半ですが、ダイエットは自分一人でできることですから。とはいえ3カ月で10キロ落ちた後は、残りの10キロがなかなか落ちなくて(笑)。運動したり、発酵食品を取り入れたり。食べ物を変えたほうがやせやすいなどいろいろ勉強しました。

自分を追い込みすぎた部分があったという(撮影/高野楓菜)

――濃厚な人生ですね。当時、印象に強く残ったタレントはいますか。

 たくさんいらっしゃいますが、ドラマ「アキハバラ@DEEP」で共演させていただいた星野源さんが印象に残っています。当時はまだ人気に火が付く前だったのですが、演技がうまくて面白いし気遣いもできる。私はうまく演技できなくてボロボロだったんですけど、「大丈夫、大丈夫」って言ってくれたり。心配されすぎると泣けてくるのですが、怒られていると笑ってくれる時もあって。「癒やす力」が絶妙でうまいんです。ご存じの通り歌は凄いし、その後にバーンと売れましたけど、「そりゃ売れるよな」って納得していました(笑)。バラエティーに出演するのは完成された方が多かったけど、ドラマは人気絶頂の方や、これから勢いが出てくる方など混合していますね。

(平尾類)