吉岡里帆

 4月1日、吉岡里帆(31)が所属する芸能事務所「A-Team」が突然、休業を発表した。「所属俳優・タレントにおきましてはそれぞれの道で活動を続けてまいります」とHP上で発表したが、具体的に移籍先などは記されておらず、どうなるかは不明だ。宙に浮いた状態になった吉岡だが、ほかにも主演するはずだった4月ドラマが制作中止になったりするなどゴタゴタが続いている。だが一方で、女優、タレントとしての評価はすこぶる高い。

 3月に発表された恒例の「男性が選ぶ恋人にしたい有名人ランキング」(オリコンニュース)では今年も1位に輝き、3年連続トップに輝いた。昨年はバラエティーでもトークで爪痕を残し、好感度も上がり続けている。なぜここまで支持されているのか。スポーツ紙の芸能担当記者はこう分析する。

「彼女はよく『何を考えているかよくわからない恋人』という設定の役柄を演じますが、これは吉岡さんのパブリックイメージともぴったりと合います。そんな“彼女感”の強さが好感を持たれていることで、3年連続『恋人にしたい有名人』で首位を獲得できているのではないでしょうか。“どんぎつね”をはじめとしたCMで醸し出す雰囲気も秀逸です。老若男女誰からも愛される、非常に間口の広い女優だと思いますね」

吉岡里帆(写真:つのだよしお/アフロ)

■コメディーセンスも抜群

 一方、昨年10月に放送されたバラエティー番組『何か“オモシロいコト”ないの?』(フジテレビ系)では、吉岡が100回ボケるという企画に挑戦。放送から半年が過ぎた今でもその模様がショート動画でバズっており、“ボケまくる吉岡”も世間をにぎわせている。

「もともとコメディーセンスは抜群で、女優として三木聡監督や福田雄一監督の撮影現場で“笑いの間”を学んできたというキャリアもあり、かわいさと面白さを同居させる演技ができます。同番組ではショッピングモールを舞台にしたシンプルな物ボケなのに、吉岡さんがやると笑いの破壊力が増す。バラエティー対応力で圧倒的な力を見せつけたこともあり、放送直後から、お笑い関係者の間でも話題となりました」(前出の記者)

 こうしたなか、最近の吉岡はトラブルに見舞われることが多いのも事実だ。冒頭の事務所休業のみならず、4月から土曜ドラマ『たーたん』(日本テレビ系)に出演予定だったが、『セクシー田中さん』(同)をめぐる騒動によりドラマの制作が中止となった。これを受け、吉岡は自身のSNSで「今年に入って考えること沢山あります。改革の時なんだなきっと。兎に角目の前の仕事を一生懸命に… 環境に感謝して、人に物事に誠実に」とコメントを寄せた。

吉岡里帆(写真:アフロ)

■泥だらけの女優人生

 しかし、そもそも吉岡の女優人生は順風満帆だったわけではない。

 いまでこそ飛ぶ鳥を落とす勢いだが、女優としては遅咲きだった。書道家を目指して京都の大学に通っていたころに芝居に目覚め、小劇場の舞台を踏むところから女優業をスタート。その後、東京の養成所に通いながら、オーディションを片っ端から受け、アルバイトを何個も掛け持ちしながら東京と京都を夜行バスで往復し続けたという苦労人だ。

「映画『明烏』のヒロイン役をつかんだときは、監督の福田雄一さんから『お前は中途半端にブスで、年齢も中途半端で、いろいろ中途半端なんだから、死ぬ気で芝居しなさい』と言われたことで、体当たりの演技をする覚悟が生まれたとか。その後、転機となったのは23歳のときに出演したNHKの朝ドラ『あさが来た』。ヒロイン役のオーディションでは落選したのですが、ヒロインの親友役に抜擢され、やっと女優としての足掛かりをつかみました。その後、ドラマ『カルテット』で悪女役を熱演してブレークし、さらに同年放送の『ごめん、愛してる』では一転してはかなげで清純なヒロインを好演。演技の幅の広さを示し、人気を不動のものにしました。見た目からは控えめで薄幸そうな雰囲気すらかもし出すこともありますが、実はがむしゃらに死ぬ気で頑張ってきたからこそ、今の地位を築いたのです。泥だらけの女優人生を歩んできたからこそ、彼女と仕事をしたがる監督や俳優は多いんです」(前出のスタッフ)

吉岡里帆(写真:つのだよしお/アフロ)

■かつては「あざとい」イメージも

 芸能評論家の三杉武氏は吉岡についてこう述べる。

「吉岡さんは演技力に加えて、癒やし系の雰囲気やみずみずしさ、かわいらしい笑顔などで多くの男性ファンを魅了し、業界内からも高い評価を受けています。役のイメージやグラビア露出などの影響もあり、一部女性視聴者からは“あざとい”といったネガティブなイメージを持たれることもありました。ただ、実際はストイックな苦労人で、一緒に仕事をしたことのある映像スタッフいわく、周囲に気遣いもできるサッパリとした気取りのない性格とのこと。ブレーク前に映画で共演し、今も親交のあるベテランの石倉三郎さんがトーク番組に出演した際、当時から吉岡さんには芝居に対する並々ならぬ情熱を感じていたというコメントをしていたのも印象深いですね。近年はそうした素の部分も徐々に世間に浸透し、女性からの支持も高まっているので、今後ますます活躍の場を広げていくのではないでしょうか」

 今はトラブルに見舞われているが、持ち前のガッツと根性で未来を切り開いていくはずだ。

(藤原三星)