インタビューに応じる12歳の声優、青木遥(あおき・はるか)さん/2011年12月3日生まれ、声優。主な出演に「ちいかわ」ちいかわ役(撮影/山本倫子)

「ちいかわ」人気が日本中を席巻している。2022年4月から放送されている「めざましテレビ」内のアニメで主人公のちいかわを演じているのが、12歳の声優、青木遥さんだ。なぜ、声優を志したのか。

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■豊かな感情を言葉に

 遥さんが「声優になりたい」と思ったのは、小学校2年生のころ。アニメが好きで、声優を目指していたこともある母の影響で、遥さんも幼いころから大のアニメ好きだった。母は、遥さんが豊かな感性を持っていると日ごろ感じていて、「声優をやることで、うまく言葉で感情を表現できるようになるのではないか」と考え、一緒に声優教室を見学に行った。

 教室では、さまざまなゲームや発声練習が行われていた。遥さんは「楽しそう」と興味を持った。

「声優教室では、ジョーカーを引いた人が『犯人』になって『市民』をウィンクで倒す『ウィンクキラーゲーム』をやっていて、楽しそうでした。滑舌を鍛える外郎売(ういろううり)もやっていて、ほかの子が苦戦している言葉を自分がスムーズに読めることに気付いて、『声優に向いているかもしれない』と思いました」

 取材中、母と一緒に半年かけて覚えたという外郎売の長ぜりふをすらすらと諳んじた。教室を見学してから、声優という仕事の魅力に引き込まれるまでに時間はかからなかったという。

■声を駆使する声優に憧れて

「『魔入りました!入間くん』の主人公の鈴木入間役を、村瀬歩さんが演じていて、入間は凶悪な声のときもあれば、女の子みたいなかわいい声のときもあるんですが、村瀬さんは声の使い分けが本当にすごい。村瀬さんのいろんな声の演技を聴いて、声優さんに憧れるようになりました。

 山口勝平さんもすごいんです! 『山口さんの“ONE PIECE”のウソップの声がふざけた感じはすごいよね!』と母に伝えたら、山口さんが演じる『らんま1/2』の早乙女乱馬役のことを教えてくれて、Netflixで観てみたらウソップとは全然声が違って、驚きました」

 どんな演技に驚いたか、どんな点に惹かれるか――。声優たちの魅力を、いきいきと話してくれる。

 遥さん自身もいま、「ちいかわ」という有名キャラクターを演じている。約2年前にちいかわ役と出会った。

 ちいかわのセリフは独特で、はっきりとした言葉はあまり喋らない。「えーと」や「えへへ」や「うん」や「わーい」といった短いセリフが多い。難しくないのだろうか。

「声の高さや低さを調節して、うれしさや悲しさを表現しています」と青木遥さん(撮影/山本倫子)

■ちいかわと「以心伝心」

「そういう表現をするのが私は得意だと思っています。

 原作を読んで、ちいかわがその時々でどんな感情なのかを考えて、声の高さや低さを調節して、うれしさや悲しさを表現しています。

 最近は絵コンテを見れば、前後のストーリーを含めて、ちいかわがどういう感情なのか、わかるようになってきました。監督さんから一発でOKをもらえたり、褒められたりするとうれしいです!」

 ちいかわとは、すっかり以心伝心のようだ。きょうだいたちも、ちいかわを演じる遥さんのことを誇りに思ってくれている。

「双子の姉が広報係を名乗っていて、みんなに私がちいかわの役をやっていることを宣伝するんです(笑)。だから、ほかの学年の子たちも『アニメ、見てるよ!』とか『ちいかわをやってるなんてすごいね!』って言いに教室に来てくれたりしました。仲のいいクラスメイトから、『小さくてかわいいから、ちいかわにぴったりだね』って言ってもらえたこともあります」。

 時折、照れ笑いを浮かべつつ、真っすぐに自分の言葉で話してくれる。ちいかわの好きなところを聞いてみた。

「ちいかわの、友だちのハチワレとかに気遣いができるところや、ちょっとしたことで泣いちゃうところにほっこりします。何より小さくてかわいい。だって、ちいかわだから」

ちいかわについて「小さくてかわいい。だって、ちいかわだから」と青木遥さん(撮影/山本倫子)

■「討伐」にも行ってみたい

 もし、「ちいかわ」の世界に行けるとしたら、何をしたいのだろうか?

「ちいかわの家に行きたい! 私は食べることが大好きなんですが、ちいかわの世界にはおいしそうな食べ物がたくさんあります。

 朝は、ちいかわが持ってる目覚まし時計で起こされて、部屋から出たら、むちゃうまヨーグルトの“ヨーグルトシュークリーム“を食べたい。その後、“フエラムネ”の湧きドコロに行ってフエラムネを食べてから、“空飛ぶピザ”でマルゲリータピザを作って食べたい。

 それから、討伐に行ってみたいです!」

 ちいかわの中の少女は、明るくて、真っすぐで、少し勇ましい。目を輝かせ、「ちいかわ」の世界に思いを馳せた。

(構成/ライター 小松香里)