今季がプロ入り4年目の巨人・秋広優人(写真提供・読売ジャイアンツ)

 巨人の“未来の主軸打者”として成長が期待される秋広優人のキャリアはこの先どうなっていくのだろうか……。プロ入り4年目となる今季はさらなる飛躍も予想されていた「背番号55」だったがシーズン開幕は二軍で迎え、いまだ一軍に呼ばれる気配すらない。

 秋広はプロ3年目の昨季、自己最多の121試合に出場して打率.273(406打数111安打)、10本塁打、41打点をマークし、2年連続のBクラスとなったチームの中で数少ない“明るい話題”を提供した。新たなシーズンでも阿部慎之助監督が率いる新生巨人で攻撃の柱として期待されているはずだが、ここまでのところ一軍に登録されずに二軍暮らしが続いている。

「阿部巨人は開幕から手堅く勝ち星を重ねていて順調に見えるが、秋広を使えないのは誤算。岡本和真とともにクリーンアップを任せたかったはず。交流戦を迎える頃には万全な状態で一軍に合流して欲しい」(巨人OB)

 身長2メートルの体格を生かしたパワフルな打撃は魅力十分。右打者の岡本と左打者の秋広が中軸にどっしり構えることができれば、打線のバランスも良くなるのは間違いない。新助っ人のオドーアが開幕前に突然退団となり、巨人入りが確実とも報道されたメジャー帰りの筒香嘉智は古巣のDeNAと契約を結んだことで、“左の大砲”として秋広の重要性は増してきているはずだ。

「ハマった時の飛距離は日本人離れしている。荒削りな部分はあるが技術も上がっている。原辰徳前監督が我慢して起用し続けたことで実戦経験を積めたことも大きく、自信を得ているのもわかる」(巨人関係者)

 昨秋と今春のキャンプでは「特別強化指定」に指名され鍛え上げられた。しかしオープン戦では6試合の出場で16打数2安打の打率.125と結果を出せず、3月12日から二軍調整に。ドラフト3位ルーキーの佐々木俊輔、2年目の萩尾匡也、オープン戦で復活をアピールした松原聖弥など正外野手の争いが激しくなる中で、開幕一軍に残ることができなかった。

「阿部監督は一軍初采配なのでスタートで失敗しないことをまず第一に考えていたはず。オープン戦の結果にこだわり、開幕時に調子が上がりそうにないと判断した秋広を外したのだろう」(巨人OB)

「ここからは結果を見ていくよ、と言った中で結果を出せなかったからね」と阿部監督は秋広の二軍降格を説明。調子さえ上がれば一軍昇格も早いと思われていたが、現状二軍でも結果が出ていない状態が続いている。これまで打率.211(90打数19安打)、0本塁打、6打点という成績となっている(4月25日終了時点)。

 また、秋広が開幕一軍から外された理由はオープン戦の結果が悪かっただけではないという声もある。

「阿部監督は自身の色を出したかったのもあるはず。パワハラなどにうるさい時代でも、厳しさを押し出すスタイルを見せたかったのもあるだろう。秋広には気の毒だが、他選手への見せしめ的な意味合いも込められているのではないか」(巨人関係者)

 秋広の自覚が足らない行動に対して阿部監督は厳しかった。寝坊が原因で球団公式行事で2度の遅刻をして、「(キャンプは)最初は三軍にしようかなと思った」と怒りをあらわにしたほど。また試合状況を考えずに淡白な打撃をしたオープン戦の試合後には、「(秋広は)ちょっと野球知らないんじゃないかと思います」と苦言を呈した。

「秋広への対応は驚くべきことではない。阿部監督は感情をストレートにぶつける昭和タイプの部分もあるから」(巨人担当記者)という声もあるように、阿部監督は二軍を指揮した時代から「ダメなものはダメ」という態度は一貫している。

「秋広への処遇は期待の裏返しでもある。(中央大の後輩にあたる)澤村拓一(現ロッテ)に対してもそうだったが、気にかけているからこそ厳しく接する。苦しんだ先に日本を代表するスラッガーになれる選手だと信じている」(巨人担当記者)

「まだいろんなことを試している最中。一番良い形を求めています」(秋広)と、二軍では打撃フォームの確認と再構築を行っている。桑田真澄二軍監督からは「今は結果を気にせずにいろんなことにチャレンジしてみよう」と言われており、技術と精神の両面を高めている真っ最中だ。

 先述の通り二軍でも今のところ結果が出ていない。しかし同じ「背番号55」を背負った松井秀喜氏も、プロ入り後しばらくは苦労した時期もあった。また、“遅刻グセ”があるという部分も共通しているところではある。

「ゴジ(松井氏)も遅刻は酷かった。何度言っても治らなかったが、常に結果で周囲を黙らせた。秋広も今は色々言われるだろうが、結果を出して笑い飛ばせるくらいになれば良い。それだけのポテンシャルはある」(巨人関係者)

 誰もが大きな期待を抱くからこそ厳しい目で見られてしまう。しかし今年9月で22歳というのは大学4年生と同じ年齢であり、結果は残すに越したことはないが焦る必要もない。二軍にいる今のうちに技術、体力、精神面を徹底的に鍛え上げれば良いはず。一軍へ戻って来た時には、無敵の「新ゴジラ」と呼べるような選手になっていることを期待したい。