大きな地震はいつ、どこで経験するか分かりません。では、もしもゴルフ場にいるときに激しい揺れを感じたら、どのように対処すればよいのでしょうか。

いざゴルフ場で地震に遭った際の避難手順

 地震が多い国の日本では、大きな地震がいつ、どこで起こるか分かりません。もしもラウンド中に激しい揺れを感じた場合の対処を紹介します。

ラウンド中に地震に遭っても冷静な判断ができるようにしておきたいもの(写真はイメージです) 写真:AC
ラウンド中に地震に遭っても冷静な判断ができるようにしておきたいもの(写真はイメージです) 写真:AC

 2024年は元日から石川県の能登半島をはじめとした北陸地方一帯を最大震度7の巨大地震が襲うという、あまりにも衝撃的な1日から始まりました。つい先日もお隣の台湾で大きな地震があったばかりです。

 日本は兼ねてより「地震大国」と呼ばれており、私たちは今後も甚大な被害を及ぼすであろう大きな揺れに警戒しなければなりませんが、必ずしも自宅や職場などの生活圏で遭遇するとは限りません。

 では、もしもゴルフ場にいるタイミングで大きな地震が発生したら、どのように対応するべきなのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「自分も、ちょうど2011年の東日本大震災が発生した瞬間にはゴルフ場でラウンドをしている最中でした。その時にはグリーンの上にいたのですが、グリーンは地面からそのまま芝が張られているわけではなく、『客土』と呼ばれる盛り土の上に造成されているものなので客土が結果的にクッションの役割を果たしたのか、地面の揺れをある程度吸収してくれたように思います。さらに、開けているグリーンの中心にいれば木が倒れてくる心配もあまりないので、ゴルフコースで地震が起きた際に最も安全なのはグリーンといえるかもしれません」

「外でも揺れていることが分かるような大きな地震が発生した際は、プレーはすぐに中断したうえでクラブやキャディーバッグなどはその場に置いたままの状態にし、安全な避難経路が確保された状態であれば、身一つでとりあえずクラブハウスの近くまで戻ったほうが良いのではないかと思います」

「クラブハウスの被害状況によって、建物の中に入るべきか反対に外で待機しておくべきなのかは分かれますが、とにかくゴルフ場全体で拠点となる場所の近くまで移動すれば安否確認もスムーズに行えるでしょう。また、周辺の地域がどのような状態になっているか、自宅までの道路が寸断されていたり大渋滞が発生したりしていないかどうかといった情報も入手しやすいはずですので、ものが倒れたり落ちたりする恐れがないような広めの場所にみんなで集合し、ゴルフ場のスタッフの指示に従って冷静に行動をとることが大切です」

 大きな地震が来るとその場で留まってしまいがちですが、外界と遮断された状態に等しいコースの真ん中で待ち続けても情報がまったく入って来ず、次に何をすればよいのか分からなくなってしまいます。

 そのため、揺れが収まったら周囲の安全を確認しつつ、クラブハウスまで戻ったほうが無難といえそうです。

身の安全のために近づかないほうが良い場所は?

 では、大きな地震が起きた直後のゴルフ場で「ここは危険だから近づかない方が良い」といった箇所はあるのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。

「ゴルフ場は、全体的に土地を人の手によって改変して造られているため、地震の揺れがきっかけで地盤が緩くなっているところが出てくる可能性があります。特に、山岳コースでは落石や土砂崩れが発生する危険があるので、切り立った崖地のような場所には気を付けるべきでしょう。ほかにも、池が上下左右に何度も揺さぶられることによって大きな波が立つケースも考えられ、水をかぶったり足を滑らせて池に転落したりしてしまう恐れがあります。ですので、そのような場所は特に近づかないように注意しましょう」

 さらに、ティーイングエリアやカート道に亀裂が走って一部が崩落している場合もあるので、カートには乗らず徒歩でフェアウェイの中心など開けている部分を歩いて避難するのも大事です。

 では、ゴルフ場においては地震が発生した際に備えてどのようなことを行っているのでしょうか。全国でゴルフ場を運営する、株式会社東急リゾーツ&ステイの広報担当者は以下のように話します。

「弊社のゴルフ場では年に1〜2回程度、設備の法定点検による休場日を利用して避難訓練を実施しています。主な内容としては、館内放送などによる呼びかけやクラブハウス内の避難誘導のルート確認、来場者名簿を使用した人数や安否のチェックがあります」

「また、GPSでカートがどのあたりにいるのかも把握できるので、コースに出ているお客様の状況把握についても訓練をし、必要に応じてスタッフを出してコース上に残っているお客様を迎えることも行います。また、地震と同時に火災が発生した際の訓練も実施したり、AEDによる救命活動の講習も受けたりしています」

 日本では南海トラフや首都直下など、これからも各地で巨大地震が襲ってくると予想されています。もしかすると、ラウンドをしている最中に遭遇することもあるかもしれないので、落ち着いて正しい判断ができるように心掛けたいものです。

ピーコックブルー