多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回は、米女子ツアー「フォード選手権 presented by KCC」の笹生優花(さそう・ゆうか)です。

笹生優花の好調の要因はパッティング

 3月28日から31日の期間、米女子ツアー「フォード選手権presented by KCC」が開催されました。優勝したのは、先週世界ランキング1位に返り咲いたネリー・コルダ選手です。1月の「ドライブオン選手権」、前週の「朴セリ選手権」に続き、出場試合3連勝を達成。シーズンの序盤ですでに3勝を挙げ、ツアー通算は11勝となりました。

 日本勢の最上位は、笹生優花選手と古江彩佳選手の13位タイでした。笹生選手は、3日目終了時点で首位に1打差の4位タイにつけていましたが、残念ながら21年「全米女子オープン」に続く2勝目には届きませんでした。

 そんな笹生選手は、今季の米女子ツアーにここまで4試合出場。初戦の16位から、17位、27位、13位とトップ10フィニッシュはないものの、首位と1打差で最終日を迎えた今大会に象徴されるように、状態は悪くありません。要因の一つはパッティングにあります。昨シーズンの平均パット数は29.77で57位でしたが、今シーズンはここまで28.88で24位と上昇しています。パッティングが良くなったのは、ヘッド、グリップ、ルーティンをチェンジしたことが関係していると考えられます。

米女子ツアー「フォード選手権presented by KCC」での笹生優花 写真:GettyImages
米女子ツアー「フォード選手権presented by KCC」での笹生優花 写真:GettyImages

 ヘッドは、昨年のシーズン途中にピン型からマレット型に変更。またグリップは、今シーズンから細いタイプから太くて長めのタイプに替えています。「ピン型+細グリップ」から「マレット型+太長グリップ」に替えると、良い意味でファジーにストロークできるようになります。

 ルーティンはアドレスしてからターゲットを確認する回数が減りました。昨シーズンまでは2〜5回程度と回数が定まっていませんでしたが、今大会は3回に統一されていました。

 視線をボールに戻して始動するまでの時間も大幅に短縮されています。以前は、視線をボールに戻してから始動するまでに5秒くらいかけている時もありましたが、今は視線を戻してすぐにストロークを始めています。

2〜3秒以上時間をかけるとイメージがなくなる?

 人間が景色を覚えていられるのは2〜3秒だそうです。つまり、それ以上時間をかけてしまうと、カップやライン、ターゲットのイメージがなくなった状態でストロークしなければいけなくなるわけです。

「距離感が合わない」「インパクトが緩んでしまう」「狙った所に転がせない」など、パッティングに悩みを持っている方は、“お地蔵さん”になっていないか自分のストロークをチェックしてみてください。視線を下に移してから始動までに3秒以上かかっている場合は、ターゲットから目を戻した後にスッとヘッドを動かすようにトレーニングしましょう。ぶっつけ本番でやると慌ててしまうので、練習から習慣づけることをオススメします。

笹生優花(さそう・ゆうか)

2001年生まれ、フィリピン出身。アマ時代は、「アジア大会」の女子個人戦で金メダル(16年)、「オーガスタ女子アマ」3位(19年)など活躍。19年にJLPGAのプロテストに合格し、20年にツアー初勝利。21年には「全米女子オープン」で畑岡奈紗とのプレーオフを制し、メジャー初制覇を達成。同年の東京五輪はフィリピン代表として出場した。日本2勝、米国1勝。

【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)

1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

小澤裕介