中途半端な距離のアプローチで「ピタッ!」とスピンで止まるショットを打ちたいと思っているアマチュアは非常に多いです。しかし、ダウンブローに打ち込むスイングでスピンをかけるのアマチュア向きではなく非現実的。そこで、誰でも実践可能なスピンアプローチ術をインドアゴルフレンジKz亀戸店の筒康博ヘッドコーチに指南してもらいました。

「ピタッとボールが止まる」のは条件がそろった時だけ

 中途半端な距離のアプローチショットで「スピンが効いてボールが止まる」結果になるには、いくつかの条件がそろう必要があります。

アマチュアが憧れる「スピンが効いた」アプローチショットは、ダウンブローに「打ち込む」スイングは必要ない
アマチュアが憧れる「スピンが効いた」アプローチショットは、ダウンブローに「打ち込む」スイングは必要ない

 カバーが軟らかいウレタンスピン系ボールとフェースの溝が新しいウェッジを使用することはもちろん、インパクトで芝が挟まらないライ、そして着弾するグリーン面が軟らかく少し傾斜がある……など、「ボールが止まりやすい状況か?」が重要です。

 これらの条件がそろっていない状況から「スピンがかかるスイング」があるのかというと、少なくともアマチュアが実践するには無理があります。

 プロや上級者のアプローチショットは、グリーンに落ちた途端「キュキュッ」とスピンがかかり止まるイメージがあります。しかしそれは、スイングというより「スピンがかかりやすい状況」からうまく打った影響の方が大きいことを知って欲しいです。

「スピンロフト」が確保できれば止まるアプローチが打てる

 中途半端な距離からのアプローチでスピンをしっかりかけるには、インパクト時のロフトと入射角で決まる「スピンロフト」が大切になります。

 例えば、入射角「10度」のダウンブローでインパクト時のロフトが「40度」ならスピンロフトは「50度」になります。

鋭角なダウンブローのインパクトではロフトが少なくなり「中弾道・高スピン」に、浅い入射角でもロフトが多ければ「高弾道・高スピン」になることもある
鋭角なダウンブローのインパクトではロフトが少なくなり「中弾道・高スピン」に、浅い入射角でもロフトが多ければ「高弾道・高スピン」になることもある

 しかし、ダウンブローに打ち込むことができなくても、インパクトロフトが「50度」なら、入射角が「3度」だったとしてもスピンロフトは「53度」になります。つまり難しいスイングができなくても、ロフトが大きいウェッジを使えばスピンロフトが大きくなり、スピンが増えるだけでなく高い打ち出し角度も確保できます。

 基本的にダウンブローが強くなるほどインパクトのロフトが立ちやすくなるので、「高弾道かつ高スピン」を狙うなら、スイングよりもウェッジのロフトを増やす方が実践的なのです。

打ち込みは不要、ダフリに注意しながらヘッドを送り出すだけ

 アマチュアはプロや上級者のような「低く飛び出してキュキュッと止まる難しいアプローチ」を打てなくても、落下角度が得られる高弾道&高スピンを狙った方が実践的です。

鋭角に打ち込むよりも、ロフトの多いウェッジを「浅い軌道」で送り出すスイングでも「スピンロフト」が得られ高弾道&高スピンになる
鋭角に打ち込むよりも、ロフトの多いウェッジを「浅い軌道」で送り出すスイングでも「スピンロフト」が得られ高弾道&高スピンになる

 ロフトの多いウェッジをハンドファーストに構えず、ダフリに注意しながら浅めの軌道でボールの下に送り出すようにスイングするだけで、十分グリーンで止まるだけの「スピンロフト」を得ることができます。

 感覚的には「芝をする感覚」がインパクト後に出せればOKです。周りから見れば「フワッと」上がったようにボールが飛び出し、「ポトッと止まる」感じのアプローチになっているはずです。

 派手なスピンのかかり方ではありませんが、狙った所に落ちたボールがグリーンを出て行ってしまうことはなくなるでしょう。

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。

猿場トール