ポルシェ初の電気自動車=バッテリーEV(BEV)である「タイカン」は、2019年のフランクフルト・モーターショーで世界初公開され、日本では2020年から販売を開始。2024年2月には初の大幅ナイナーチェンジモデルが発表されている。その新型タイカンに、最速最強モデルとなる「タイカン・ターボGT」とサーキット走行に特化した「タイカン・ターボGTヴァイザッハ・パッケージ」の予約受注が開始された。

最高出力1100ps超のモンスターEV

両モデルとも1100psを上回る最高出力を発生するモンスターEVで、軽量化とエアロ・ダイナミクス対策が施され、その走りを次のステージに引き上げたことになる。なお、リア・アクスルには半導体材料に熱伝導率に優れたSiC(炭化ケイ素)を用いた、より強力で効率的な改良型パルス・インバーターが搭載されている。

専用のエアロパーツを装着

エクステリアで目を惹くのは、専用開発のエアロブレード付フロント・スポイラーで、リアにはアダプティブ・スポイラーを用意した。ヘッドライトはマトリックスLEDが標準で、無償オプションでHDマトリックスLEDヘッドライトにアップグレードできる。

ディテールでは、両モデルともにフロント・ボンネットと軽量アロイホイールのハブカバーにポルシェカラークレストが配されているだけでなく、リア・リッドの「Turbo GT」ロゴがマットブラック塗装になるなど、最速タイカンにふさわしい化粧が施された。さらに、ドア下部とフロント・ボンネットには、「ヴォルトブルー」または「マットブラックとハイグロスブラック」の「Taycan」ロゴ入りデカールが用意される。

75kgにおよぶ軽量化

軽量化も抜かりはなく、数多くのカーボン製パーツを採用することで、ターボSからターボGTは最大75kgものダイエットを実現した。具体的には、Bピラー・トリム、ドア・ミラーのアッパーシェル、サイド・スカートのインレイなどにカーボンファイバーを使用。加えて、CFRP製のフルバケット・シートや軽量ラゲッジルームの採用、テールゲートの電動ソフトクローズ機能の削除までも盛り込み軽量化されたスパルタンな仕様となる。さらに、ヴァイザッハ・パッケージは後席まで取り払われ、2シーター化されている。

エアロ・ダイナミクス関連では、アンダー・ボディのエア・ディフレクター・エレメントと新しいフロント・ディフューザーの追加がニュース。ヴァイザッハ・パッケージのリアにはウイングサポートを固定したカーボン織仕上げの固定式リア・ウイングが備わる。その結果、ダウンフォースの総量は最大220kgにも達するという。

最速タイカンにふさわしい内装

インテリアも最速タイカンにふさわしい仕立てと装備になっている。スポーティな「Race-Tex」とブラックレザーのトリムをはじめ、カーボン織り仕上げ(ハイグロス)の軽量フルバケット・シートを標準装備。

「フロント・アダプティブ・スポーツシート・プラス」(18way電動調整機能、メモリーパッケージ付)を無償オプションでオーダーできるのも見逃せない。フロント・ヘッドレストには「Turbo GT」ロゴが刺繍され、エアコン・パネルの下には各モデルのロゴ入りバッジを用意。「ヴォルトブルー」または「GTシルバー」のコントラストカラーを基調としたエクスクルーシブ・インテリア装備も選択できる。

また、「GTスポーツステアリング・ホイール」は、リムがブラックのRace-Texで覆われていて、12時の位置にマークが入っている。ターボGTにはターボSと同じ「スポーツクロノパッケージ」が用意されている。

0-100km/h加速は2.2秒

炭化ケイ素を用いた新しいパルス・インバーターはモーターを制御するための重要なコンポーネントで、今回の両モデルには最大電流900Aのパルス・インバーターを搭載。「タイカン・ターボS」の600Aのパルス・インバーターを上回る出力とトルクをもたらすという。

両モデルのシステム最高出力は789ps(580kW)。ローンチコントロール使用時のオーバーブーストは最高1013ps(760kW)、最高出力測定法では2秒間で最大1108ps(815kW)に達する。最大トルクは両バージョンとも1340Nmを発揮。変速比とギアボックスのロバスト性も改良されている。

動力性能は、ターボGTの0-100km/h加速が2.3秒、ヴァイザッハ・パッケージ装着車両はわずか2.2秒で、ターボSより0.1〜0.2秒も速い。0-200km/h加速はターボGTが6.6秒、ヴァイザッハ・パッケージが6.4秒で、ターボSより1.3秒短縮した。なお、ターボGTの航続距離は最大で555km(WLTPモード)となっている。

脚まわりもGT専用チューニング

脚まわりでは、GT専用チューニングが施された「ポルシェ・アクティブライド・サスペンション」を含めた「ダイナミクス・パッケージ」の標準化がトピックス。スポーツ走行時に威力を発揮し、サスペンションがタイヤへの荷重をバランスよく配分し、路面追従性を向上。同パッケージにはスペシャル・パフォーマンス・サマータイヤと21インチ軽量鍛造ホイールも用意されていて、専用ホイールはスポークにリリーフポケットを採用。これにより軽量化と同時にブレーキの効果的な換気を促すことができる。

さらに、標準装備される軽量セラミック・ブレーキは「ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ」(PCCB)がベースで、ブレーキディスク・チャンバーとブレーキキャリパー・ハウジングの設計変更により2kg以上の軽量化をもたらしている。バネ下質量と回転質量を減らすことで、パフォーマンスの向上に寄与。ブレーキキャリパーは専用色のヴィクトリーゴールドが配されている。

設定されるボディ・カラーは新色の「ペールブルーメタリック」と「パープルスカイメタリック」を含めた全6色。新色の2色はこれから先1年間に亘りタイカン・ターボGT専用になる。

そのほか、「ポルシェ・エクスクルーシブ・マニュファクチャー」による「ペイント・トゥ・サンプルプログラム」を使うことで、カスタマイズ・オプションの選択肢を広げることもできる。

価格はターボGTが3132万円、ターボGTヴァイザッハ・パッケージが3132万円と、最速タイカンの名にふさわしい設定になっている。

文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)