中国製の軽商用EV、ASF2.0っていったい何者? 乗り物評論家の森口将之がテスト 宅配業界の革命児か!?
三菱ミニキャブEVよりもたくさん走る?
ASF2.0の開発に関わった佐川急便をはじめ、マツモトキヨシやオートバックスセブンなどに納入され、コスモ石油のカーリースで一般向けの取り扱いを始めるなど、デリバリーは着々と進んでいるようだ。
スタイリングは最近の日本製軽バンと比べると丸みを帯びている。インパネは大きなセンターディスプレイ、デジタルメーターに加えて、車体左側を映し出すモニターもあって今風。センターディスプレイは日本語表示でグラフィックもわかりやすい。
使い勝手はかなり工夫していて、頭上前方にはルノー・カングーやシトロエン・ベルランゴといったフレンチ・トールワゴンを思わせるリッド付きトレイがあり、スライド・ドア開口部のフロア下には、台車や充電コードを入れるスペースがある。
走り始めて最初に感じたのは、ステアリングの手応えが薄いことと、スロットル・ペダルを踏んでから加速が立ち上がるまでに一瞬の間があること。速度を上げていくにつれ、リアの床下に置かれるモーターのサウンドが車内に響く様子は、FRP製のモノコック・ボディを持つ初代ロータス・エリートを思わせる。
とはいうものの慣れると、基本的な走りにそつがないことがわかった。シートはサイズが小さいもののクッション感はあるし、脚まわりは大きな荷重が掛かることを想定してリアのセッティングが硬めになっているが、辛いというほどではない。
日本製のライバルとなる三菱ミニキャブEVに対するアドバンテージは満充電での航続距離で、WLTCモードでミニキャブEVが180kmなのに対してASF2.0は243kmと大きく上回る。軽貨物ドライバーの1日の走行距離は200km程度と言われているから、ASF2.0なら1日の仕事を無充電でこなせそうだ。
商用車にとっての充電は、その間仕事が止まるわけで、やはり1日の仕事を完遂できるレベルが欲しいだろう。また、前述した頭上のストレージ・ボックスや台車格納スペースを含めて、現場の声を反映したクルマづくりに好感を抱いた。
文=森口将之、写真=茂呂幸正
(ENGINE2024年6月号)