定年後の生活費を年金でカバーしようと考えている人も多いかと思います。50歳になると、将来受給できる年金の見込み額をねんきんネットやねんきん定期便で確認できますが、記載されている金額がそのままもらえるわけではありません。年金からも税金や社会保険料が引かれます。   本記事では、予定年金額が月16万円の場合、手取りはいくらになるかを解説します。

年金から引かれる社会保険料・税金には何がある?

年金から引かれる社会保険料と税金は次のようなものがあります。

≪社会保険料≫

●介護保険料
●国民健康保険料(後期高齢者医療保険料)

≪税金≫

●所得税
●住民税

ねんきん定期便やねんきんネットに記載されている金額から、これらの金額を差し引かれて、残りが手取りとなります。
 

年金に税金がかかる理由

年金収入は一定額を超えると課税対象となる「雑所得」に該当し、所得税の納付義務が発生します。65歳未満では年間108万円、65歳以上では年間158万円を超えると所得税を支払う必要があります。
 

年金16万円の場合の手取りは14万1909円

66歳単身、毎月の年金額が額面16万円(年間192万円)で、年金以外に収入がない場合の手取りを計算してみます。
※扶養家族なしと仮定し、1円未満は切り捨てて計算します。
 

社会保険料

≪介護保険料≫
年金を受給していても、介護保険料は納付する義務があります。65歳以上は介護保険の第1号被保険者となりますが、保険料は一律ではありません。各自治体が所得区分を設けており、所得区分に応じた保険料を納める必要があります。一度住んでいる自治体の介護保険料を確認してみましょう。
 
宮城県仙台市を例とすると、介護保険料は年間で9万円となります。
※前年の合計所得も今年と同様、年金収入192万円のみとします。
 
≪国民健康保険料(後期高齢者医療保険料)≫
65歳になると国民健康保険料が年金から差し引かれます。75歳になると後期高齢者医療保険制度に移行し、後期高齢者医療保険料が差し引かれます。国民健康保険料には医療分・支援金分・介護分の3つがあり、これらの合計金額を支払うことになります(65歳以上は介護分の負担はありません)。
 
介護保険料と同様に、国民健康保険料も自治体ごとに異なります。宮城県仙台市の場合、国民健康保険料は年間約9万3630円になります。
 

税金

≪所得税≫
年金収入は所得税の対象となります。税金額の計算式は次の通りです。
 
所得税=課税対象所得×約5%
課税対象所得=(年金額−公的年金等控除額)−48万円(基礎控除)−社会保険料−その他控除
 
年金額:192万円、公的年金等控除額:110万円、社会保険料:約18万3630円(介護保険料:9万円+国民健康保険料:約9万3630円)なので、計算すると課税対象所得は約15万6370円です。所得税は7818円となります。
 
≪住民税≫
住民税は「所得割額+均等割額」で計算します。
所得割は課税対象所得に応じて課税され税率は一律10%です。均等割は所得にかかわらず、5000円です。
 
年間192万円の年金収入の場合、住民税は次の通りです。
課税対象所得=(年金額−公的年金等控除額)−43万円(基礎控除)−社会保険料−その他控除
 
計算すると課税対象所得は20万6370円、所得割は2万637円となります。均等割は5000円なので住民税の合計は2万5637円になります。
 

年金16万円の場合の手取りは?

社会保険料と税金をあわせて年間で21万7085円が年金より差し引かれる計算になります。
1ヶ月あたり16万円の年金をもらえる予定でも、実際の手取りは1ヶ月あたり14万1909円(年間170万2915円)と2万円近く減ってしまう計算になります。約89%の金額が手取りとなります。
 

まとめ

本記事では、年金の種類と受給金額、年金が16万円の場合の実際の手取りについて解説しました。年金からも社会保険料や税金は引かれます。少子高齢化社会で今後社会保険料の負担は増える可能性もあります。年金を受給してみて「思ったよりも少なかった」ということがないように、手取りがどのくらいになるのかを把握しておきましょう。
 

出典

日本年金機構 大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています
仙台市 第1号被保険者(65歳以上の方)の保険料
仙台市 令和5年度仙台市国民健康保険料の目安
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
 
執筆者:齋藤彩
AFP