将来訪れるであろう夫婦2人の「年金生活」をイメージしたとき、多くの人が「なるべく家計に余裕がある暮らしをしたい」と考えるでしょう。では、どの程度の年金受給額があれば、余裕ある老後が送れるのでしょうか。   本記事では、片働きの夫婦が2人で年金を月25万円受給できる年収の試算と、専業主婦(夫)であるパートナーが働いた場合に増える受給額についてシミュレーションします。ぜひ参考にしてみてください。

夫婦2人世帯での家計平均額はいくら?

総務省統計局「家計調査年報(2022年結果の概要)」によると、65歳以上夫婦のみ無職世帯の平均収入(税金などを天引きされた後)約21万4426円、消費支出平均は約23万6696円で、約2万2270円の赤字家計になっていました。
 
消費支出のうち、最も支出割合が高いのは食費6万7776円で、次いで交通通信費2万8878円、光熱水道費2万2611円と続きます。
 

年金を月25万円もらうには、年収はいくら必要?

前述の家計調査での消費支出平均額に近い25万円を年金で受け取れるには、夫が会社員、妻が専業主婦の場合において年収はいくら必要でしょうか。
 
2023年度の国民年金の満額は月6万6250円(年間79万5000円)です。そのため、夫婦で必要な25万円から夫の国民年金6万6250円と専業主婦の妻の年金6万6250円を引くと、残りは11万7500円です。
 
夫が約11万7500円の厚生年金を受け取るために必要な年収と月収を試算します(20歳から45年働いた場合)。
 

<試算>

11万7500円円×12月=141万円
 
141万円÷(乗率5.481÷1000×540月)=平均月収約47万6393円
 
約47万6393円×12月=必要な年収約571万6716円(ボーナス・加給年金などは除く)

45年間を通して、年収は約571万円必要となる見込みになりました。
 

妻も働くと、年金はいくら増えそう?

妻も働くと、年金はいくら増えそうでしょうか。令和5年度での社会保険加入が必要になる月収約8万8000円では、加入1年で年間受取額は8万8000円×(5.481÷1000)×12月=約5780円増加します。
 
例えば、30歳から65歳まで社会保険に加入して月収8万8000円では、8万8000円×(5.481÷1000)×420月=年間約20万2577円増加します。
 

なるべく手元にお金が残る働き方は?

老後のために、なるべく手元にお金が残る働き方には、どのようなものがあるでしょうか。主な対策をいくつか挙げます。
 
(1)夫の扶養の範囲内で妻も働き、妻の収入を貯蓄する
 
夫の扶養の範囲内だと、妻は健康保険料と年金保険料の支払いがありません。妻の収入を貯蓄に回すなどの工夫がしやすくなる可能性が高まります。
 
(2)妻も社会保険に加入し、収支がプラスになる収入金額で働く
 
妻も社会保険に加入し、社会保険料などを差し引いても収支がプラスになる収入金額で働くと、妻が受け取れる年金額も増えていきます。
 
(3)夫婦ともに働けるうちは働き、少しずつ貯蓄する
 
年金の受け取り開始を先に延ばす「繰下げ受給」を選択すると、先延ばしする期間に応じて年金額は増加していきます。しかし、待機期間を途中で取りやめると、年齢によっては損をする場合もあるので、制度利用には慎重な検討が必要です。
 

まとめ

総務省統計局「家計調査年報(2022年結果の概要)」によると、65歳以上夫婦のみ無職世帯の消費支出平均は約23万6696円で、約2万2270円の赤字家計になっています。試算では年金を月25万円受け取るには20歳から45年間を通して夫の平均年収は約571万円必要となる見込みになりました。
 
妻が月8万8000円で働くと、加入1年で年間受取額は約5780円増加し、就労期間が長くなると受け取れる年金額も増えていきます。夫婦で時々、家計を見直しながら今後の働き方を検討することが望ましいでしょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査年報(2022年結果の概要)
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー