職場によっては、本来の時間より早めの出社を求められることがあります。何らかの手当がついていれば納得できるでしょうが、無償の場合も少なくありません。「上司より早く出勤する」という暗黙のルールがあった場合、それは残業代の対象になるのでしょうか。今回は、会社独自の常識で出社時間を早めるときの残業代のあり方や困ったときの対策について解説していきます。

早めの出社は残業代の対象になる?

残業した場合と同じように、早く出勤したときも残業代(時間外手当)の対象になります。早く出勤させたために「法定労働時間」を超える場合、使用者は25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金については、労働基準法第37条で定められています。例えば、時給が1200円なら、25%にあたる300円を上乗せした1500円を支払うのが原則です。
 
なお、月給制の場合はいったん時給に換算してから割増賃金を計算していきます。計算する際、通勤手当や家族手当、住宅手当などは給与に含みません。ただし、一律で支給されるものは給与に含めて計算します。
 
例えば、基本給が23万5000円、皆勤手当が8000円、家族手当が2万円、通勤手当が1万円だった場合、給与に含まれるのは皆勤手当の8000円のみです。そのため、給与の合計は24万3000円です。次に、1年間における1ヶ月あたりの平均所定労働時間を出します。
 
年間所定休日が122日で、1日の所定労働時間が8時間なら「(365日−122日)×8時間÷12ヶ月」で、1ヶ月の平均所定労働時間は162時間です。次に、さきほど算出した給与(基本給+皆勤手当)の24万3000円を162時間で割ると、時給は1500円になります。
 

早く出社するというルールを誰が決めているのか?

今回のケースのように「上司より遅く出勤するのは失礼」といった暗黙のルールが存在する場合、誰が決めているのかという点に着目することも重要です。経営者自体がそういった考え方で無償の早出が慣習となっているなら、残業代を認めてもらうのは難しいといえます。しかし、部署内だけのルールなら、一部の役職者が勝手に行っているにすぎない可能性があります。
 
一部の役職者に限定されたルールなら、社内の相談窓口に話してみるといいでしょう。コンプライアンスを重視する会社なら、そういった社員に対して厳しい注意がなされるはずです。それで解決すれば、嫌な思いをしながら無償で早出することもありません。
 
しかし、会社全体がそういった風潮なら残業の強要になりますし、パワハラに該当する可能性も出てきます。もしも上司が始業時間より30分早く出社するなら、30分よりも前に会社にいる必要が出てきます。そもそも「部下は上司より早く出勤するもの」というルールが全体に浸透している会社は、ブラック企業に該当すると考えたほうがいいでしょう。
 

悪い慣習は担当窓口または公共機関に相談を

早出も残業代の対象になります。これまで無償だったなら、残業代を請求することは可能です。会社独自の暗黙のルールで通常より早い出勤を強要されているときは、パワハラに該当する可能性があります。一部の上司だけが行っている場合は会社の相談窓口に、会社全体で行われていることなら労働基準監督署内の「総合労働相談コーナー」に相談するのも適切な手段です。
 

出典

東京労働局 しっかりマスター労働基準法ー割増賃金編ー
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー