2020年から「高等教育の修学支援新制度」、いわゆる大学無償化制度が開始されました。また、令和6年度からは大学無償化制度の所得制限が緩和され、現在よりも多くの世帯が利用できるようになる予定です。しかし、大学無償化制度は一人親世帯でも対象にならない場合があります。   そこで本記事では、「一人親世帯でも大学無償化制度を利用できない場合がある」ことについて解説していきます。令和6年度からの大学無償化制度についても紹介するので、今後の参考にしてください。

高等教育の修学支援新制度とは?

高等教育の修学支援新制度、いわゆる大学無償化制度は、給付型奨学金と授業料等の減免を受けられる制度です。
 
給付型奨学金は、その名の通り返済の必要がない奨学金で、国公立大学で自宅通学の場合は約35万円、自宅外通学の場合は約80万円を受け取れます。私立大学だと自宅通学の場合は約46万円、自宅外通学の場合は約91万円の給付です。
 
また、授業料等の減免は、授業料や入学金の支援制度で、国公立大学の場合は入学金が約28万円、授業料は約54万円減免を受けることができます。私立大学の場合は入学金が約26万円、授業料が約70万円減免されます。
 
しかし、大学無償化制度には所得制限があり、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯を対象としています。例えば、一人親世帯で子が1人の場合、年収の目安は約370万円までです。そのため、事例のような年収500万円の一人親世帯の場合は、子どもが1人だと大学無償化制度を受けられないことになります。
 

令和6年度からは所得制限が緩和

これまでの大学無償化制度は、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯が対象となっていたので、恩恵を受けられる世帯は限られていました。そこで令和6年度からは所得制限が緩和されることになりました。
 
具体的には、世帯年収600万円程度で「多子世帯(扶養する子の人数が3人以上)」、「理工農系学部に進学する学生がいる世帯」が対象となります。多子世帯の支援は、全額支援の4分の1、理工農系学部の支援は文系との授業料の差額分です。
 
もっとも、事例のような年収500万円の一人親世帯で子どもが1人の場合は、世帯年収600万円以下であるものの、多子世帯ではないので大学無償化制度の対象ではありません。子どもが理工農系の大学や学部に進学する場合は対象となりますが、文系大学・学部の差額分のみの支給となります。そのため、大学無償化制度の所得制限緩和の恩恵は少ないと言えるでしょう。
 

国の教育ローンや貸与奨学金の利用も検討しましょう

大学無償化制度は所得制限が緩和されるので、これまでよりも多くの世帯が利用できるようになります。世帯年収の目安は600万円程度となったので、これまでの所得制限から考えると大きな緩和です。
 
しかし、「多子世帯」であることや「理工農系の大学・学部に進学する学生」が対象なので、事例のような世帯だと利用できないところが注意点です。また、扶養している子どもが1人や2人の場合は、世帯年収が対象でも利用できません。
 
もっとも、理工農系の大学・学部に進学する場合は対象となるので、家族で大学無償化制度を利用するか話し合うことも大切です。
 
大学にかかる教育費については、国の教育ローンや貸与奨学金の利用を検討することもひとつの選択肢です。特に、貸与奨学金は無利子の第一種奨学金もあるので、返済の負担を減らすこともできます。利用するためには要件を満たす必要があるので、確認するようにしてください。使える制度や要件をよく確認し、学費の準備に役立ててみましょう。
 

出典

文部科学省 高等教育の修学支援新制度
文部科学省 高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)における所得に関する要件
文部科学省 「こども未来戦略方針」の「加速化プラン」等に基づく高等教育費の負担軽減策について(令和6年度〜)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー