多くの会社では60歳で定年を迎えますが、「人生100年時代」と言われる現代では、多くの人が60歳以降も働いています。その場合、60歳以降も働いて厚生年金保険料を納付することで、どれくらい将来の年金受給額が増えるのかが気になる人もいるのではないでしょうか。   本記事では60歳の定年後、年収300万円で65歳まで働いた場合、働かなかった場合と比べて年金受給額がどれくらい増えるのかを解説しています。

60歳以降の就業率は増加傾向

内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、ここ10年で高齢者の就業率はかなり上昇しています。例えば、2012年の就業率は60〜64歳が57.7%、65〜69歳が37.1%でしたが、2022年では60〜64歳が73.0%、65〜69歳が50.8%と、両方とも10%以上も上昇しています。
 

厚生年金は原則70歳まで加入できる

会社員は国民年金と厚生年金に加入し、基本的には65歳以降に老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給可能です。
 
国民年金は原則20歳以上60歳未満の人が加入しますが、厚生年金は会社員などで条件を満たしている場合、原則70歳まで加入できます。
 

60歳以降も働くと老齢厚生年金はどれくらい増えるのか

それでは、60歳以降も働いた場合、老齢厚生年金の受給額はどれくらい増えるのでしょうか。60歳以降に働いた際に増える年間の老齢厚生年金の受給額は次の計算式で求められます。
 
60歳以降に増額される金額(報酬比例部分)=平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数
 
60歳以降の平均年収が300万円だった場合の平均標準報酬額は26万円、加入月数は60月ですので、計算すると8万5504円です。
 
思ったより少ないと思う人もいるかもしれませんが、仮に65歳から20年間受け取ったとすると、総額で170万円以上ですので、決して少ないとは言えないでしょう。
 

60歳〜65歳まで働くメリット

65歳まで平均で年収300万円稼ぐと、将来もらえる年金は年間で8万円以上増えます。そして、65歳まで働くことには他にもいくつものメリットがあります。
 
年金の受給開始年齢は原則として65歳からです。そのため、定年後に働かない場合は60歳から65歳までの生活費は貯蓄で補う必要があります。仮に、生活費が月額15万円、年間で180万円だとすると、5年間では900万円にもなります。この年間180万円をまかなえるくらい働けば、貯蓄を切り崩さなくても良いでしょう。
 
また、年金は65歳から受給せずに、最大75歳まで受給開始時期を遅らせることもできます。そして、年金を繰り下げると65歳から受け取った場合よりも毎月の年金受給額を増やせます。65歳まで働くと、繰下げ受給という選択肢も選びやすくなるでしょう。
 
ちなみに、年金は60歳〜64歳から受給開始する繰上げ受給も選択できます。ただし、繰上げ受給をすると、繰下げ受給とは反対に、毎月の年金受給額が65歳から受け取る場合よりも減ってしまいます。
 

まとめ

60歳定年後、年収300万円で65歳まで働くと年金は「毎年8万円以上」増えます。年金は生きている限り受け取れますので、毎月の収入が増えるのはうれしいところです。
 
とはいえ、中には定年後は貯蓄も十分あるし、ゆっくり年金生活を送りたいという人もいるでしょう。65歳まで働くことによるメリットはさまざまですが、いろいろな面から定年後の過ごし方を検討しましょう。
 

出典

内閣府 令和5年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)1  就業・所得
日本年金機構 国民年金の加入と保険料のご案内
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー