■要約



酒井重工業<6358>は道路舗装用ロードローラをはじめとする道路建設機械の専業メーカーである。長い歴史を有し、国内シェアは70%超を誇っており、近年では北米や東南アジアを中心に海外市場の開拓に注力している。



1. 2024年3月期第3四半期の業績概要

2024年3月期第3四半期の連結業績は、売上高が24,301百万円(前年同期比9.8%増)、営業利益が2,580百万円(同62.7%増)、経常利益が2,676百万円(同68.7%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益が1,947百万円(同66.1%増)と、おおむね計画どおりだった。地域区分別売上高では、国内は国土強靭化加速化対策を背景として堅調な市場環境ながら、度重なる価格改定、幅広いコスト上昇に対して設備投資動向が足踏み傾向となり、売上高は前年同期比1.9%増となった。海外売上高も堅調に推移しており、同17.5%増となったが、特に米国ではインフラ投資法を背景とした道路建設投資の拡大と円安効果により同31.8%増となった。アジア向けは、インドネシアで需要回復が進んだものの中国及びインドネシアを除いたASEAN市場(主にタイ、ベトナム)が減速し、同3.5%減となった。価格改定効果や輸送費の落ち着き、円安などにより売上総利益率が29.1%(前年同期は25.6%)と改善し、販管費が10.5%増に留まったことから営業利益は大幅増益となった。しかしながら、第3四半期会計期間だけを見ると営業利益は18.5%増に留まっており、増益ペースは上期に比べるとややスローダウンしている。



2. 2024年3月期の業績見通し

2024年3月期の連結業績は、売上高が33,100百万円(前期比5.2%増)、営業利益が3,300百万円(同31.7%増)、経常利益が3,300百万円(同41.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が2,300百万円(同35.7%増)と予想されており、第2四半期時点で上方修正した予想値と変わっていない。世界的にインフラ投資が拡大するなか、世界の建設機械需要は底堅く推移すると予想しているが、一部では鈍化の懸念があり、下期について同社はかなり慎重な見方だ。特に今まで業績を牽引してきた米国市場では、需要は堅調ながらパナマ運河の状況によって部品調達に遅れが出る可能性があり、同社は第4四半期についても慎重な見方をしている。現時点において通期予想が下振れる可能性は低いが、一方でさらなる上方修正については過大な期待は禁物と思われる。



3. 中期の成長戦略

同社は、2021年6月に2026年3月期を最終年度とする「中期的な経営方針」を発表した。最終目標として「企業価値・株主価値の向上」を掲げ、これを達成するために「事業の成長戦略」と「効率的な資本戦略」を推進する方針だ。定量的な目標としては、2026年3月期に売上高300億円、営業利益31億円、ROE(自己資本当期純利益率)8%を実現し、安定的に配当性向50%を維持することを目指す。初年度である2022年3月期、次年度である2023年3月期の業績は堅調に推移し、2024年3月期もここまでは堅調に推移しているが、現時点でこの計画は変更しておらず、数値目標も据え置いている。2024年3月期の配当については、ROEが6.0%を上回る見込みであることから、公約どおり配当性向50%として、年間配当を270.0円(中間90.0円、期末180.0円)へ増配することを発表済みだ。このように、ROEの改善に向けて明白な資本政策を発表し、それに沿った株主還元を実行している同社の姿勢は、大いに評価に値する。



■Key Points

・長い歴史を有するロードローラのトップメーカーで国内シェアは70%超。海外シェアの拡大により成長を図る

・2024年3月期第3四半期は前年同期比62.7%の営業増益だが、通期では前期比31.7%増を予想

・中期的な数値目標(2026年3月期に売上高300億円、営業利益31億円)は据え置いた



(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)