昨年は、モトザワ自身が、老後の家を買えるのか、体当たりの体験ルポを書きました。その連載がこのほど、『老後の家がありません』(中央公論新社)として発売されました!(パチパチ) 57歳(もう58歳になっちゃいましたが)、フリーランス、夫なし、子なし、低収入、という悪条件でも、マンションが買えるのか? ローンはつきそうだ――という話でしたが、では、ほかの同世代の女性たちはどうしているのでしょう。今まで自分で働いて自分の食い扶持を稼いできた独身女性たちは、定年後の住まいをどう考えているのでしょう。それぞれ個別の事情もあるでしょう。「老後の住まい問題」について、1人ずつ聞き取って、ご紹介していきます。

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フリーランスの介護離職

老後の心配もあるけれど、それ以前に、まず、いまの生活が大変、というフリーランスや派遣社員ら非正規雇用の女性も少なくないでしょう。会社員と違って、フリーや非正規の働き方は不安定で、景気の波に影響されやすいです。特にコロナは大打撃でした。それまでの仕事が打ち切られたり、発注が延期になったりして、収入が減ったり、ゼロになったりした人も多いに違いありません。

そこに、老親の介護が重なったら――フリーライターの美佳さん(仮名、58歳)は、そんな一人。介護生活に突入し、4年半も「開店休業」状態です。フリーランスは、会社員より離職は簡単で、仕事復帰は困難です。「しみじみ痛感した。介護離職はしちゃいけないって。特にフリーは絶対、仕事をストップしちゃダメ。ここから立て直せない」。美佳さんはいま、介護生活から抜け出せないでいます。

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毎週、木曜と土曜は、父親(90)はデイサービスだから、午前9時過ぎ〜午後4時までは自分の時間ができる。月曜と水曜は、家事支援でヘルパーが夕食を作ってくれるので、父の食事を心配せずに出掛けられる。父に認知症はなく、勝手に就寝してくれるから、夜遅くなっても平気――老後の家について話を聞きたい、と美佳さんに連絡を取ったら、こんなスケジュールを言われました。モトザワは驚きました。美佳さんは昨秋に84歳の母を看取り、いまは父と2人暮らしで、在宅で面倒を見ています。老後どころか、目の前の生活に追われているようです。

美佳さんは一人っ子です。共働きだった両親と、首都圏のJR駅徒歩4分のマンションで暮らしてきました。美佳さんは大学を卒業後、業界紙の記者を経て、フリーライターになりました。いくつかの編集プロダクションに所属した時期もありますが、厚生年金がない会社もありました。 一人暮らしの経験はなく、ずっと実家住まいです。