福井県南越前町と越前市にまたがる山地でJR東日本エネルギー開発(東京)が計画を進めていた「福井藤倉山風力発電事業」(風車最大16基、最大出力5万7600キロワット)について、同社が計画の中止を決め4月12日、国や県、地元市町に届け出た。同社は中止理由について、福井新聞の取材に「(風の強さなど)風況が想定を下回り、事業性の確保が困難な見通しとなった」と説明した。

 事業実施区域はホノケ山山頂を中心に、北は南越前町具谷、南は藤倉山山頂までの一帯約1002ヘクタール。同社は「今後、県や市町と相談した上で、官報や市町の広報紙で(計画中止を)周知する」としている。

 南越前町の地元住民によると、自然エネルギーの活用に理解を示す声が多かった一方で、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選ばれている今庄宿の景観への影響を懸念する意見もあった。住民の一人は「ブナ林の伐採で防災上の心配もあった。中止になり、ほっとしている」と話した。

 同社は2020年7月に計画を公表。これまでに環境影響評価(アセスメント)の4段階ある手続きのうち2段階目の方法書の提出、審査を終えていた。

 陸上風力計画について、南越前町ではほかに2件のアセス手続きが進んでいる。越前市に関係する計画はなくなった。