もうすぐ2023年が終わろうとしていますが、この一年間、外国と日本の文化や社会を比べて、驚くような発見がありました。今年を振り返り、世界各国に在住するライターが書いた記事の中から、暮らしに身近な「住宅」と「食」の分野について選りすぐりのトピックスを紹介します。

 

【住宅】「住まい」にまつわる発見

↑日本との違いが満載

 

老後破産と無縁のニュージーランドの不動産

老後破産が社会問題化しつつある日本ですが、同じく高齢化が進むニュージーランドではそのリスクは極めて稀です。理由は下記のように、日本と大きく違う不動産事情にあると言えます。

 

ニュージーランドで不動産は投資の感覚がかなり強く、持ち家比率がとても高いのが特徴。収入や家族構成により、一生に何度か買い替えることが一般的です。日本と違い不動産の売却税や相続税がないため、家の売却益を次の家の購入資金に充てることができます。

 

また新築物件重視の日本とは違い、中古物件が市場の約90%を占めています。新築物件の価格が上がるにつれて中古物件の価値も年々上昇するため、資産を増やすことができるのです。

 

このように持ち家を上手に売買すれば老後の見通しは明るいのですが、昨今は物価高騰や不景気が暮らしを圧迫。若い世代にとって、不動産投資の第一歩である初めての住宅購入が困難になっているようです。

 

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家が狭くなっていく英国が布団に出会った

一方、住宅価格やローン金利の上昇などで住宅不足に悩む最近の英国では、大きな家どころか持ち家の購入自体が難しくなっています。手狭な賃貸空間での暮らしを強いられている状況で注目されているのが、省スペースを追求した日本の家具。なかでも丸めて収納可能な寝具の「FUTON(布団)」が大人気です。

 

1980年に英国で設立されたFuton Companyは、40年以上にわたり高品質の布団や家具を国内で提供。小さな場所を生かした日本の家具に注目し、省スペースでの暮らし方を提案する店舗「FUTON」で革新的な商品を展開しています。

 

例えば「BED IN A BAG」は、丸めて収納ができる布団。日本では畳んで収納するのは当たり前ですが、ベッド文化の英国ではとても画期的なアイデアなのです。英国の住宅難は今後も続きそうなので、狭い空間を利用できる布団の人気はより高まりそうです。

 

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家の中も美しいイタリア

持ち家を美しく保つことに強いこだわりがあるイタリア人は、物を「見せない」テクニックに長けています。一般的にイタリア人は自宅に人を招いて食事をすることが大好きで、ツアーさながら、ベッドルームやトイレなどプライベート空間まで人に「見せる」ことが前提となっているからです。

 

驚くのは、家の中の美観に並々ならぬこだわりを持っているため、リビングや寝室など各部屋にごみ箱を一切置いていないこと。必ずと言っていいほど、ごみ箱はキッチン下の扉内、もしくはベランダなど外の空間にまとめて設置します。現地在住の日本人も最初はとても不便に感じても、慣れてしまえば特に気にならなくなったようです。

 

単身用アパートでも地下に小さな個別の専用スペースが用意されているケースが多く、家の中に収納しきれない物はそこで保管します。

 

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超合理的なオランダ都市部のごみ捨て場

住宅とごみ処分は切り離せない問題ですが、オランダの都市部のごみ捨て場はとても効率的です。ごみ箱が地上にあり、ごみ自体は地下に収納される設計になっています。外からごみが見えないため景観や臭いの心配がなく、カラスなどにごみ袋を荒らされる心配もありません。

 

ごみ捨て場に置かれたごみ箱が地下の収納庫とつながっており、地上のごみ箱にごみ袋ごと捨てると、そのまま地下に収納される合理的な仕組み。ごみ捨ての時間や曜日が限定されず、いつでも捨てることが可能です。

 

地下に隠れている収納部分は深さ2メートルほどあり、収集時には収集車のクレーンがごみ箱ごと地下から引き揚げてごみ袋を回収。このシステムは自動化され手作業で行う必要がないため、収集員は1人で済みます。

 

ごみ回収箱の種類は普通ごみ、ビン類、紙類のみで、細かい分別は住民ではなく、ごみ収集所で実施。「収集拒否」という考え方はなく、きちんと分類されていなくても回収してくれます。

 

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窓を開けない国・アメリカ

米国では窓を開けて定期的に換気する習慣がなく、年中閉めっぱなしという家も少なくありません。学校でもほとんど窓を開けず、そもそも「窓=開けるもの」という認識がないようです。

 

窓を開けない理由の1つ目は、エアコンの存在。建物全体の温度を一定に保つ空調システムを組み込んだ住宅が多く、24時間いつでも適温で過ごすことができます。

 

2つ目は治安上の問題。強盗や誘拐といった事件が日々起こるため、特に治安の悪い地域では基本的に窓を開けません。カーテンすら昼夜問わず閉めっぱなしという家もあります。

 

3つ目は空気汚染で、近年、特に注目されています。呼吸器系疾患や心疾患といった健康被害が指摘されてきましたが、2022年に発表された論文では鬱病や不安障害との関連性も明らかとなりました。

 

治安や空気汚染の問題が解決しない限り、窓を開けない家は減るどころか、ますます増えていくかもしれません。

 

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【食】缶詰の魅力を再発見

↑缶詰のデザインが再注目された2023年

 

魚の缶詰の良さに気付いた英国

食品価格が急上昇している英国でトレンドになったのが、お手ごろ価格の魚の缶詰を木製ボードにおしゃれに並べるメニュー。パンデミックによるロックダウンが起こるまで、英国では非常用に缶詰をストックする習慣はなく、缶詰自体にやや“ダサい”イメージがありました。

 

しかし、米国発の簡単タパス風メニュー「#魚の缶詰でデートナイト」が英国でもSNSで大ヒット。魚の缶詰を開けてそのままボードに置きパンやピクルスを添えるだけで、SNS映えする「節約・時短・おしゃれメニュー」に大変身と、一躍話題になりました。

 

これまでナッツなど乾き物がメインだった“家飲み”のおつまみも、魚の缶詰の登場でバリエーションが拡大。人気を反映し、スーパーなどで売られていた地味なデザインの魚の缶詰は人気イラストレーターの手によっておしゃれにイメージチェンジしています。

 

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日本のためにデザインを変えたモルディブ

モルディブでは、料理の基本食材といっても過言ではないのがツナ缶。チリや玉ネギ入り、ブラックペッパー入りなど種類がとても豊富で、中身のツナもゴロっと大きく食べ応えがあります。

 

以前のツナ缶は缶切りが必要なタイプでしたが、現在は全てプルトップ型(缶切りを使わず、缶の蓋についている引き金を引っ張って開けるタイプ)に変更されています。実はそのきっかけは、日本の東日本大震災でした。

 

モルディブでは日本の支援でつくられた防波堤や学校、さらに支援金で揃えた障がい者用のタクシーや救急車などが数多く見られます。こういった友好関係にあったモルディブは、震災が起こるとすぐに募金活動を実施し、義援金と約69万個のツナ缶を日本に送ってくれたのです。

 

その際、被災地で缶切りを探して開けるのはかなり不便と考え、日本に送るツナ缶の蓋を全てプルトップへと変更。モルディブ国内でも、そのままプルトップのツナ缶が出回るようになりました。

 

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世界を見回すと、このような生活に密着した場面で各国に意外なトレンドやライフスタイルがあることがわかります。さまざまな事例に接することで、日本に住む私たちの視野も広がっていくかもしれません。

 

執筆/渡辺友絵