一見、こわもてで近寄りがたい雰囲気のある末永健雄選手。インタビューが始まると物腰が柔らかく、シャイな一面が。広報担当者からは「礼儀正しい」との評価で、見た目と中身にギャップがあるよう。チームでの自分の役割をまっとうし協調性を大事にしていることや、コンディション維持の苦労から備わった特技を語ってくれました。

―実は野球に転向しようとしていた!?
僕のラグビー人生は、6歳の時に兄が通っていた地元のスクールに入ったことが始まりです。ただ「プロ野球選手になりたい」という願望があったので、小学校を卒業するタイミングで一度ラグビーをやめたいと思ったこともありました。クラブチームでやめる人がいなかったので、言い出せずに結局そのまま続けました……(笑)。

小学6年の時はチームのキャプテンだったこともあり、負けるとよくコーチに怒られました。なぜコーチが怒ってくれたのか今なら理解できますが、その時は「自分ばかり怒られている」と感じることも多く、“勝たなければいけない”というプレッシャーから、ラグビーを楽しめていない気持ちが少なからずあったかもしれません。

ラグビーを本格的に楽しく感じ始めたのは、中学の途中からです。少しずつ体が大きくなって、自分が思い描いていた動きができるようになってきた頃です。試合で活躍できるようになり、勝つうれしさを感じられたのも大きかったですね。

―自分の役割をこなすために必死です!
今までラグビーを続けてきて、小中のクラブチーム、高校、大学、社会人とステージが変わるごとに“質”が全然違うなと感じています。簡単に言えば、高校はエース一人がいれば勝てる。大学も年代ごとに選手が変わるのでチームの“型”がそこまでしっかりしているわけではない、という印象です。僕も大学まではある程度自由にプレーさせてもらっていたのですが、社会人チームではそれではダメだとすぐに気づかされました。

社会人チームでは一人一人の役割が明確になります。なので、一人でもその役割ができていない場合に、チームとして攻守がうまくいかなかったり、崩れたりします。

自分がしたいプレーもありますけど、「チームのために動かないといけない」「自分の役割は責任をもってやり遂げよう」という意識に変わりました。そうすればチームも活気づきますし“勝利”といううれしさも味わえる、と。

―見た目はオラオラ系。でも本当は人見知り
見た目やプレースタイルからか“オラオラ系フランカー”と紹介されたり、ワイルドな人物と思われたりしがちですけど、自分では人見知りで、基本的におとなしい性格だと思っています。ラグビーも社会人になってからは“仕事”という意識があるので、よりまじめに取り組んでいます。そこはチームメートからギャップがあると言われます(笑)。

高校の友達といる時はもっとくだけていて、イジったりイジられたりと違うキャラなのかもしれません。どちらかって言うとイジられるタイプ。今なら髪の毛を伸ばしているので……「髪の毛は切ったほうがいい」とか。会っている時にいきなり写真を撮られて「切るお金がないらしい…」って友達同士のグループLINEに送られたりしたことも(笑)。

髪を伸ばしているのは気分転換みたいなもので、「こう見られたいから変える」といった考えは特にないですね。学生時代も今と同じくらい伸ばしていましたが、次第に飽きてしまってバッサリと短く切りました。けど、今の髪型はスタンドから見ているファンの方に見つけてもらいやすくていいかもしれないですね! より“オラオラ系”に見られてしまうかもしれないですが(笑)

―体重は2kg増えただけで体の感覚が全然違う
苦労していることは……やっぱりコンディションの維持です。高校まではあまり体重は気にせずに「走れたらいい」くらいの気持ちで過ごしていましたが、大学では体を大きくした方がいいかなと思って体重を増やしました。トップリーグに入ったら外国人選手も多く、体が大きい選手もたくさんいたので、当たり負けしないようさらに少しずつ体重を増やしました。

体づくりで失敗することもあります。今シーズンが始まる時もちょっと失敗しちゃいました……。開幕戦を100kgで迎えてパワーをつけようと思って、長期オフの間にたくさん食べたんです。普段から大食いで、お肉やラーメンが大好き! チームメートが食べ残したものを、たまにもらったりすることもあります。その勢いで食べていたら、めちゃくちゃ体が重たくなっていました。思ったより脂肪がつきすぎたのかもしれません……。

練習が始まっても全然走れなくて、開幕までに99kgに落としてもまだ重たくて……。97kg台後半から98kgくらいでちょうどよくなりました。2kgの差でも体の重たさや調子は全然違います。

動きだしなどの自分の体感でも分かりますが、明確に現れるのはチーム練習の時に毎回測っているGPSの数値。練習後に走行距離やダッシュの回数を確認すると、走れていないことが分かるんです。それがチーム全員に知られているのでサボれません(笑)。シーズン始めの昨年9月あたりは、コーチにもよく「全然走れていない」と言われていました。

―失敗から身につけた特技は300gジャストご飯盛り
体重増加の失敗もあって、今シーズン中の食事はお米を減らしています。ベスト体重を維持するために、ご飯の量はいつもより100g少なくして毎食300gと決めているのですが、続けていたら秤(はかり)がなくても自分の感覚で300gを盛れるようになりました。確認のために秤にのせても、誤差は±10gくらいです!

体を大きくしたことはラグビーではすごくよかったのですが、電車で席に座った時に隣に座ってもらえないことも多いです。威圧感があるんですかね……。なので電車で座る時は、背筋をやたらにピンと伸ばして縦に長くなるか、肩をすぼめて小さくなっています(笑)。

―オレンジカラーでスタジアムを埋めてほしい!
ラグビーをもっと楽しむには、まず“推しチーム”を作ることですね。そして推しチームのユニフォームカラーを身につけてスタジアムや競技場に応援に来てほしいです。クボタのファンの方は、ぜひオレンジ色を身につけてください! スタンドを見てオレンジの色が多いと、自分たちを応援しているということが一目で分かるのでテンションが上がります!

末永健雄(すえなが・たけお)1994年7月31日生まれ、福岡県出身。ポジション:ナンバーエイト(NO8)/フランカー(FL)、178cm/98kg。5歳の時、2歳上の兄が所属していた地元のラグビースクールに通い始める。中学までスクールでプレーし、福岡高校を経て同志社大学へ進学。大学卒業後の2017年よりクボタスピアーズに所属。高校日本代表、ジュニア・ジャパン、U-20日本代表に選出経験あり。昨シーズンはチームMVPの実績も。オフの過ごし方は、主にNetflixを見ること。『テラスハウス』シリーズは全シーズン視聴済み。