毎クール10作ほどのドラマをチェックし、朝ドラや配信作品にも目がないドラマラバー・オラリーさんが、2024年1月期のドラマ作品を振り返ります。前回記事はこちらから。

オラリー

福島県出身、東京都在住。8人組バンド片想いのボーカル。2児の母でもある。
片想い
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さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜(毎週日曜21時/TBSテレビ系)

いつ何時でも見ていたい俳優、西島秀俊さんをたっぷり堪能出来るドラマでした!毎話少しずつ増えていく晴見フィルのメンバーとの対話ひとつひとつが気持ち良く、色々ありつつまぁこのまま順調に終わっていくのかな〜と油断していたところ、8話からの俊平の過去回(かつて4番のエースを背負う高校球児で監督である父と共にプロ野球選手を目指していたが、隣の家から聞こえてくるヴァイオリンの音色に魅了され、野球を捨てて音楽の道へ進んだという)から一気に引き込まれ、8話以降はずっと泣いていました…。

勘当され30年間も会っていなかった父との再会と、5年間向き合えなかった娘との和解。あまり多くの言葉を用いずにそれぞれの目線や仕草で対話をしていて、さすがでした。キャストはどの方もとても魅力的だったのですが、自由すぎる両親といつまでも思春期を終えられない姉に振り回され、大人にならざるを得なかった弟役の大西利空さんが切なくて最高でした!

厨房のありす(毎週日曜22:30/日本テレビ系)

生きづらい世の中で出来ることを模索し何とか生きるありすと、そんなありすに寄り添う優しい人々の物語。ただそれだけでも十分魅力的でしたが、後半はありすの出生に関わる隠された謎にも迫っていき、なかなか見応えがありました。明るく温かいだけの話ではなく、現実と向き合ってそれぞれの考え方を話し合い、大人も子どもも真剣に考える姿が良かったです。

ありすの親友役の前田敦子さんは元々大好きな俳優さんですが、今回の役もバッチリでしたね。妊婦さん特有の座り方やお腹の守り方など、何気ない仕草なのですが、ストーリーに説得力を持たせていていちいち感動していました!門脇麦さん、永瀬廉さんもほどよく影があり、何かを携えながら日々過ごしている表情がうまく、素晴らしかったです。あと、出てくる料理が本当に美味しそうでした…!

瓜を破る〜一線を超えた、その先には(毎週火曜25:13/TBS系)

主演のお二人のたどたどしいやりとりが何とも切実で、毎週楽しみにしていたドラマでした!オープニングの、ほんの一瞬だけ笑う鍵谷の表情に毎週グッときていました。自分以外は皆うまくいっていると思い込み、孤独になっていく登場人物たち。全員の悩みはそれぞれ違っていましたが、根本的な部分は何となく共通していたような。でも実は悩みに対して答えがないままでも良い、ただ気持ちを話し合える相手がいればそれで良い、ということに皆徐々に気付いていきます。

それぞれが自分と向き合い、良い方向に向かっていくというすごくシンプルなストーリーではあるのですが、本来ならば端折ってしまいそうな繊細な描写をゆっくりと描いていて、とても良かったです。”瓜を破る”の意味が処女喪失の文学的表現、という説明をラストに持ってきたところも個人的に好きでしたね。原作漫画も読みたくなりました!

不適切にもほどがある!(毎週金曜22時/TBS系)

さすがクドカン、とにかくすごかった!ただ昭和と令和の違いを比較して、あれは良かった、これはダメだと答え合わせをするだけの話ではなく、さらにその先の、誰も知らない未来からの視点も入ってきて、すごく俯瞰的に今の時代を見ることが出来ました。毎話様々な問題について話し合っていましたが、はっきりとした答えを出すことが目的ではなくて、あんな風に皆で話し合うことが重要なんだと、改めて感じました。きっとどこかしらにそれぞれの生きるヒントがあったのでは、と思っています。

未来に起きる災害で死んでしまう娘・純子の運命を変えられず、苦悩する市郎の姿に泣き、令和を生きる純子の娘・渚が会えるはずのない昭和の高校生である純子とナポリタンを食べるシーンで泣き…。良い脚本でした。数十年後に見たら、このドラマの感想も変わっているのかもしれません。叶うならば、リアルタイムでその未来を見てみたい!そう思わせる素晴らしいドラマでした。

極限夫婦(毎週木曜24:25/関西テレビ放送)

本当にこんな夫たちが現実にいるんだろうか…?と思ってしまうくらい、徹底的にひどい描かれ方をしていて毎回笑ってしまいました!もちろんラストでこの夫たちを妻がスカッと成敗する盛大なフラグだということは分かっているのですが、それにしてもひどかった!(笑)

特に第3章の北斗夫婦の回、モラハラ全開の夫だけでなく、男尊女卑すぎる夫の家族も登場。敵が多い!妻・亜紀役の北乃きいさんはさすがの安定感で、ごく普通のお母さんをかなりリアルに演じていました。ラストもキレっぷりも爽快でした。このドラマで唯一オアシスのような存在だった男性キャラ・桜小路(亜紀が働く家事代行サービスの常連客)は、我が息子たちもお世話になりました『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』のイヌブラザーこと柊太朗さん。好きな俳優さんなので、これから他のドラマでも見られたら嬉しいです!

今期は他に、不器用な大人たちの恋愛模様を描いた『アイのない恋人たち』、優しい空気感に毎話癒された『作りたい女と食べたい女 シーズン2』、気になる展開にハラハラした『となりのナースエイド』が好きでした!

illustration_Misa Itoi edit_Kei Kawaura