年を取ると体にいろいろとガタが出始める。中でも中高年の男性に多い病気のひとつが「粉瘤」だ。「アテローム」とも呼ばれ、毛穴が詰まることがきっかけで腫れて炎症を起こしていく。いわゆるニキビが大きくなったようなもので、小さいうちはニキビ、大きくなると粉瘤と呼ばれる。

 皮膚腫瘍外科指導専門医で「あきおか形成外科」(大阪府高槻市)の秋岡二郎院長はこう話す。

「昔話の『こぶとりじいさん』は、この粉瘤ができた老人がモデルではないかと言われています。当院で診た粉瘤の中で最も大きいものだと、直径10センチもありました。悪いできものではないのですが、放っておくとQOLが低下して大変なことになります。化膿してパンパンに腫れるうえに痛みが出ますから、皆さん病院に飛び込んで来られます」

 ニキビの段階では自然に小さくなるケースもあるが、2センチを超えると小さくなることはほぼないため、病院で処置してもらったほうがいいという。大きくなって化膿している場合、2回に分けての手術が必要になる。まずは切開して化膿した膿を出す。後日、できものが縮んだ後に皮膚の下の「袋」を取り出す。袋を取り出せば「治った」=「寛解」となる。

「粉瘤は免疫力が下がった時に、毛穴が炎症を起こすことで形成されます。まずは、テスト勉強などで寝不足の生活が始まる中学生、高校生ぐらいから増えてくる。中高年の男性の場合は、仕事のストレス、寝不足、飲酒、喫煙が原因で発生する方が多いかな、という印象です。免疫力が整えば毛穴の炎症はかなり減りますから、規則正しい生活をして、過度な飲酒や喫煙をしなければ、かなりコントロールできるといえます」(秋岡院長)

 悪性のできものではないし、中高年の男性にとっては珍しいものでもない。とはいえ、悪化した場合は不快な日常生活を送ることになってしまう。日頃から生活習慣に気を配り、なるべく発症を抑えたいところだ。

 もしも粉瘤ができてしまった場合は、早めに受診した方がいい。(つづく)