期待の20歳、広島の田村俊介外野手がもがき苦しんでいる。開幕から約1か月で打率2割3厘、本塁打はゼロ。打点も、9回の決勝三塁打で1―0勝利に導いた11日の阪神戦(甲子園)以降は遠ざかり、わずか「2」。3月の侍ジャパン初選出で一気に注目度が高まり、オープン戦は12球団2位タイの3本塁打を放った。今後、結果を残すために何が必要か。悩める若ゴイの“今”に迫る。

 23日のヤクルト戦(神宮)の試合前、新井監督から密着指導を受ける田村の姿があった。指揮官は「無意識のうちにボール球を振っちゃいけないとか、追い込まれたくないとか、何かこう小さくなっているように見えた」と、手を差し伸べた理由を明かした。

 スコアブックで田村の打席を見返してみた。開幕戦は4打席4三振。その後も三振を重ねてはいたが、特に右投手に対して変化があった。12日の敵地・巨人戦で戸郷から空振り三振して以降、右投手から18打席で三振なし。打席の中で空振りすら一つもなかった。

 空振りが少なく、三振が減っているという結果は、一見すると状態が上がっているようにも思える。だが、裏を返せば、無理に当てにいっているということ。4月2日の本拠ヤクルト戦、今季14打席目で初安打を放った際には「開幕戦(4三振)は悔しかった。でも、変えることはなかった。思い切って振った」と振り返っていた。知らず知らずに思い切りが影を潜めていた20歳に、新井監督は「三振OK」と背中を押した。「三振してもいい。ボール球を振ってもいい。しっかりとスイングしなさい」と、伝えた。

 3月には、まだ1軍経験が昨年の10試合だけだった状況で侍ジャパンの強化試合メンバーに大抜てき。井端監督は「スイングは素晴らしいものがある。レギュラーシーズン次第では日本を代表する打者になると思っている」と、大きな期待を向けていた。思い切りのいいスイングこそ、田村の最大の持ち味だ。

 田村自身、いま改めて自身を見つめ直す。「春は、しっかり体全体で振っていた感じはあった。シーズンに入って、打席に入ると、やっぱり結果を求めてしまう部分があった。結果も欲しいですけど、春のいい時の状態に戻したい」。三振を恐れず、豪快な空振りを重ねていった先に、待望のプロ初本塁打が生まれるはずだ。(畑中 祐司)

 ◆田村 俊介(たむら・しゅんすけ)2003年8月25日、京都府生まれ。20歳。愛工大名電3年夏の甲子園で1回戦敗退。21年ドラフト4位で広島に入団。最速145キロ、高校通算32本塁打の二刀流もプロでは野手に専念。昨季は9月にプロ初安打から6戦連続の8安打を放ち、10試合で打率3割6分4厘。今季の推定年俸は500万円。178センチ、97キロ。左投左打。