新潟の風土や文化が反映された、新潟ならではの珍しい結婚式を紹介する本連載もこれで第3弾。第1弾はJ1サッカークラブ〈アルビレックス新潟〉の全面協力で行われる「アルビウエディング」、第2弾は近年注目が高まる新潟ワインを代表するワイナリー〈カーブドッチ〉を舞台とした「ワイナリーウエディング」をご紹介しました。今回は新潟に残る「花街」の伝統を守る老舗料亭での結婚式「鍋茶屋ウエディング」をご紹介します。

花街の文化を残す古町を代表する老舗料亭

新潟市の中心部にある「古町(ふるまち)」と呼ばれるエリアは、かつて花街として栄えた歴史があります。江戸時代中期から明治30年頃にかけて、大阪から北海道を行き来した廻船「北前船」の寄港地のひとつであった新潟県は、一時は日本一の人口を誇るまでに成長しました。

古町もその繁栄を受けて、京都の祇園、東京の赤坂や新橋にも劣らない花街となりました。今回ご紹介する鍋茶屋ウエディングの〈鍋茶屋〉とは、古町の花街文化の中心にあり続け、伝統を今に伝える老舗料亭の名前です。白い石造りの重厚な大門をくぐった先には、美しい日本庭園と、見事な木造建築が出迎えてくれます。この雰囲気は、なかなかほかでは体験できないもの。

登録有形文化財を貸し切る特別な1日

鍋茶屋の創業は1846年。約180年もの長い歴史のなかで2度の大火に見舞われ、現在の建物は1910年に建てられたのち、改築や増築が行われたもの。木造3階建てで、国の登録有形文化財に指定されています。鍋茶屋ウエディングは1日1組のみ。つまり、そんな歴史ある建物をひとり占めできるのです。

たとえば、披露宴は昭和13(1938)年に建てられた折上格(おりあげごう)天井の二百畳敷大広間で。新郎新婦や親族の待合室や記念撮影には、イタリアから招いた技師がつくり上げたという昭和7(1932)年完成の大正ロマンを感じる応接室を。ほかにも用途や規模に合わせて、趣のある調度品が設えられた館内を移動しながら行われます。花街文化が紡いできた本物の空間が広がっていますから、特に和婚を希望する人にはぴったりのロケーションといえますよね。


ゲストを満足させる料亭の婚礼料理の数々

「もちろん建物の雰囲気、ロケーションで選んでいただくこともありますが、やはり料亭の本分といえる料理で選んでいただくことが多いと思います」と教えてくれたのは、7代目である高橋英司さん。

歴史的な価値が認められた場所で、格式高い料亭の美味を楽しむことは、なかなか経験できるものではありませんよね。実際に、結婚式という場で初めて料亭を利用するというカップルやゲストも多いそうです。

「婚礼料理だからといって、決まったメニューや食材はありません。お祝いのテイストを少し入れることもありますが、普段私たちがお出ししている料理と考え方は変わらないんです」

春夏秋冬、その季節ならではの天然物や鮮度にこだわり、吟味に吟味を重ねた食材を使って振る舞われる料理の数々は、きっとゲストの心を打つはず。相談次第ですが、新郎や新婦の故郷の食材や郷土料理を加えることもできますよ。また、鍋茶屋名物の卵焼きやのどぐろの粕漬などを引き出物にすることもでき、多くのゲストに喜ばれているそうです。


花街文化を今に残す古町ならではの祝舞

鍋茶屋ウエディングの特徴といえるものがもうひとつ。古町芸妓による祝舞の演出です。全国屈指の花街として栄えた古町に華を添えてきた芸妓文化は今もなお受け継がれて、踊り、唄、三味線、鳴物といった芸を披露してくれます。

「せっかく料亭で披露宴をするなら芸妓さんの舞が見たいという要望は多いですね。全国的にも芸妓さんがいる県は珍しいですし、なかなか体験できるものではありませんから」

芸妓さんは基本3人1組。ひとりは唄と三味線、ふたりは踊り。賑やかに華やかにしてほしいという要望があれば、芸妓さんを増やすこともできるそうです。祝舞のあとはそれぞれゲストのテーブルを回ってくれ、上品に場を盛り上げてくれます。その際は一緒に写真撮影もOK。

「歴史のある料亭で行うウエディングというと、伝統や文化を守るために堅苦しいルールがあるのでは……と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。いい意味での格式の高さはそのままに、新郎新婦のおふたりが実現したいことについては最大限ご要望にお応えしたいと考えています」

歴史ある建物から感じる厳かな雰囲気、季節の旬を彩る華やかな日本料理の数々、古町芸妓による伝統芸と、格式の高さを感じつつも、自由度の高さも大切にしてくれるそうです。もし興味があれば、気軽に相談してみてください。

花街の文化が色濃く残るからこそ生まれた挙式は、多くのゲストにとって初体験の連続になることでしょう。ゲストが喜ぶ姿を見て、式を挙げるふたりも喜ぶ。大切な1日だからこそ、特別な場所と料理と演出で。長く紡がれた歴史や文化に裏打ちされた、本物ばかりがそろうオンリーワンのウエディング、ぜひ検討してみてください。

Information

料亭 鍋茶屋

address:新潟県新潟市中央区東堀通8-1420
tel:025-222-6131
web:料亭 鍋茶屋

credit  text:新潟Komachi編集部