宇宙ベンチャーispace(東京都中央区)は4月25日、2基のリレー衛星を活用した新たなデータサービスを開始すると発表した。同社の米国法人であるispace technologies U.S.が提供するもので、2026年に予定している月面探査ミッション3において実施予定という。

 この2基のリレー衛星は、ispace U.S.がSpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げ、月の南極付近に位置するシュレーディンガー盆地へ向かう月着陸船「APEX1.0ランダー」により、月周回軌道に展開する計画。月の裏側に着陸予定のAPEX1.0ランダーと地球との通信を可能にする。

 ispace U.S.は、NASA商業月面輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services:CLPS)のタスクオーダー「CP-12」に採択されており、ミッション3ではシュレーディンガー盆地に複数の科学的ペイロードを輸送する予定。リレー衛星はCP-12用に設計されており、調査完了後も極域を起点に月のほぼ全体をカバーする円形の極軌道(高円極軌道:HCPO)を航行予定。これにより、7割近くの月面南極域と地球の間の通信が可能になるという。

 リレー衛星はミッション3完了後も数年にわたって月周回軌道上に留まる予定で、月面上・周回軌道上のペイロードによって収集されたデータを顧客に提供するだけでなく、データ処理との統合で、将来的なミッションの実現、強化に貢献するとしている。

 2基の小型衛星バス(Venus級)の設計・製造は米RTXの子会社であり、小型人工衛星の製造・ミッションサービスを手掛ける米Blue Canyon Technologies社が担当する。月周回軌道上では、通信装置を搭載した小型衛星が月の裏側の着陸地点と地球を結ぶ通信を中継し、月面のランダーおよびペイロードからの高速データを地球上で受信できるという。

 ispace U.S.は、複数の民間企業や政府系機関、研究機関と継続的に商談を行っており、すでに測位・航法・タイミング(PNT)情報の提供に向けた技術実証など、さまざまな目的のペイロードの搭載が決まっているという。同社は新たに、リレー衛星の活用を希望する顧客と協議を開始している。