■「放っておいてももうかる商売」を探した

 と、説明させていただきましたが、考え方だけ正しくてもドル箱は作れません。次は「考える方向」を定めるのです。さあ、何を作ってどう売ればいいでしょうか。

 初期条件を見てみましょう。

 業務スーパーのフランチャイズ(FC)1号店がオープンしたのは2000年3月。既に少子高齢化が進み、人口が減り続ける未来が来ることは分かっていました。そして、食品流通の世界では「売り上げや利益の源泉はバイイングパワー」(規模によるコストダウン、購買力)という考えが当たり前。縮む市場で大きい者が勝つ、という世界です。

 当時の神戸物産は「フレッシュ石守(いしもり)」という2店舗しかない中小スーパーを運営していました。90年代の年商は25〜30億円。ここから、過酷な競争を勝ち抜いて、10年後、20年後も利益がきちんと出続けるようにする。しかも、できることなら「ほったらかし」でも運営できるような・・・そこまで言うとさすがに虫がよすぎますが、そんなビジネスモデルを模索していました。

 ただ、地方の中小企業が、業界に先駆けた最新システムとか、手の掛かった高度なサービスとかを開発・提供することは現実的ではありません。もちろん、「規模によるコストダウン」もできません。

 八方塞がりのようですが、ここでも物事を分解することから始めました。

 食品スーパーがやっていることを軽く頭の中でバラしてみましょう。食品スーパーは、他人が作った商品を他人に運んでもらって、それをまとめて並べて値付けして、お客さんに渡す商売です。他人が作った商品をただ売るだけでは、どの店でも似たり寄ったりの品ぞろえになります。だから価格でしか差別化できず、安売り合戦の泥仕合になり、資金力に勝る企業が有利になるのですね。

 だとすれば、規模の小さい企業が生き残るには、その逆を突くことが有効です。「自分が作った、自分だけの商品を、自分の店だけで売る」のです。

<連載ラインアップ>
■第1回 業務スーパーは、なぜ牛乳パックでようかんを売るのか?(本稿)
■第2回 経営危機の乳業メーカーは、なぜ神戸物産のもとでようかんを作り始めたのか?
■第3回 1リットルの牛乳パック入り水ようかんは、なぜ他社にまねできないのか?
■第4回 破綻寸前の製パン企業が傘下で1カ月で再生、神戸物産の型破りな経営とは?

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(沼田 昭二,神田 啓晴)