リーダーの役割は「タテ糸」を次代につなぐこと

――戦後の技術立国日本のレジェンドである井深氏と本田氏の遺訓から、現代の経営者やリーダーは何を学ぶべきでしょうか。

豊島 井深氏と本田氏が紡いできた「経営のタテ糸」から経営哲学、生き方の思想を学ぶことが大切だと思います。

 井深氏は「望むところを確信して、未だ見ぬものを真実にする」「時代の変化の兆しは、現場の末端にある」という言葉を残しました。本田氏は、「進むべき道を照らす“たいまつ”は、自分の手で掲げる」「新たなことに絶えず挑戦していくことが自分を進歩させることであり、会社も成長させる」と語りました。

 これらの言葉は、二人の経営哲学・リーダーシップ論であると同時に、人生哲学でもあります。

 私も人間としての最高の生き方は「自らの文化を後世に残すこと」、そして「人類の進化に少しでも貢献すること」だと思っています。そして、どのような文化であっても、それはある個人の一つの努力から始まります。

 例えば、いま畑に植えられているサツマイモは、ある個人が努力をして海の向こうから日本に持ってきて田畑に植えたからこそ、日本に広まっているのです。つまり、個人の一つの努力が、次の世代の文化を創る礎になるのです。

 現代のリーダーにも、自分自身や組織の「望ましい姿」を描き、そこに一歩でも近づく努力をすることが求められていると思います。そして、それが遺伝子となり、次の世代を生きる子孫の力につながります。そういった一人一人が紡ぐ「タテ糸」をいかにして継承するか。こうした考え方が、次代を創るリーダーに問われているのではないでしょうか。

(三上 佳大)