日本医療機能評価機構は4月15日、「医療安全情報No.209」を公表した。中心静脈から投与すべき高カロリー輸液や高濃度糖液などを誤って末梢静脈から投与した事例が2020年1月1️日から24年2月29日までの約4年間に8件報告されたことを明らかにし、注意を喚起している。

 太く、血流も多い中心静脈は、高カロリー輸液や高濃度糖液を投与してもすぐに希釈されるが、末梢静脈は血流が少ないためにそうはいかず、誤って投与した場合、血管痛や静脈炎などを引き起こすリスクがある。

 今回の医療安全情報では2つの事故事例を紹介している。1事例目の患者はPICC(末梢静脈挿入式中心静脈用カテーテル)から降圧剤を持続静注しており、末梢静脈からは輸液を投与していた。医師はこのうちPICCから高カロリー輸液を投与する指示を出した。ところが日勤の看護師Aは投与経路を確認せずに、末梢静脈から投与していた輸液を高カロリー輸液に変更して投与を開始。その後、夜勤の看護師Bが末梢静脈から高カロリー輸液が投与されていることに気づいた。

 2事例目の患者は中心静脈カテーテルの刺入部に感染兆候がみられた。このため医師はカテーテルを抜去後、高カロリー輸液を末梢静脈から投与するように指示。看護師は指示通りに末梢静脈からの高カロリー輸液の投与を開始した。その後、末梢静脈の血管痛と刺入部の膨脹が認められ、投与は中止となった。当該病棟は中心静脈カテーテルを挿入している患者が少なく、医師・看護師の双方に知識不足があった。

 事例が発生した医療機関では対応策として、高カロリー輸液などの中心静脈から投与すべき輸液を末梢静脈からは投与できないことの院内周知が図られているが、機構は事例2のような場合を想定し、末梢静脈からの投与が血管痛や静脈炎などにつながる危険性についても併せて周知する必要があると指摘している。