「子ども用ハーネス」をご存じでしょうか? 主に1〜3歳ごろの子どもの飛び出し事故防止などのために使われる、リュックやベストなどに紐を付けたアイテムです。好奇心旺盛な時期の子どもには、少し目を離した隙に車道へ飛び出してしまうといったまさかの出来事がたくさん起こります。しかし子ども用ハーネスは、子どもの安全を保つ一方で「ペットのよう」と言われる見た目などから、SNSなどで度々議論を生んできました。

 そんな中、「これなら見た目を気にせずつけられそう!」と今年1月に3度目の再販が実施されるほど、大変な人気を博している子ども用ハーネスがあります。まるで工事現場のヘルメットのようなデザインの『子どもの安全第一 ハーネス』です。考案者で漫画家の西野みや子さんに、開発のきっかけやこだわりについて詳しく話を聞きました。

――考案したきっかけは?

【西野さん】 妊娠中にX(当時はTwitter)で目にしたのが、子ども用ハーネスを知ったきっかけでした。その時は、見た目から批判的な意見が寄せられているのを見て、「子ども用ハーネスって反感を買うものなんだな。」と思っていた程度でした。

 出産後、子どもが1歳過ぎて歩き始めたころに、また子ども用ハーネスが批判的な意見でトレンドに上がっているのを見つけました。私自身、歩き回る子どもをみる大変さをひしひしと感じていたので、「こんな画期的なものが見た目だけで誤解されているのはもったいなさすぎる!」と思い、自分でデザインしようと決意しました。

――どうしてあのデザインに?

【西野さん】 そもそも誤解される理由があの見た目にあったからです。「子どもに紐をつけている」という点から、「ペット扱いしているみたいでひどい」「親が楽をしている」という誤解を招いていました。そこで、“安全対策”と分かればそういった誤解もなくなるのではと考え、老若男女誰もが一目で理解できる工事現場のヘルメットのデザインを思いつきました。

 一番気に入っているのは肩部分の反射板です。これがあることで、単なるかわいいアイテムではなく実用性兼ね備えている点をより感じていただけるんじゃないかと思っています。

――商品化の経緯は?

【西野さん】 最初は「こんなのあったらいいな。」と、商品化なんて全く考えずにX(当時はTwitter)にデザイン案を投稿しました。するとたちまち2万件以上のいいねをいただくなど、同じ子育て世代のママさんを中心にすごく多くの反響をいただきました。「それだったら」と、工事現場のヘルメットを作っている会社や、子ども用ハーネスと作っているメーカーさんに問い合わせてみたりしましたが、個人では全く相手にされませんでした。

 あきらめていたころ、CAMPFIREの担当者さんからお声がけいただき、クラウドファンディングで資金を集めることになりました。最初は「本当に支援してくれる人なんているのか?」と不安でいっぱいでしたが、ふたを開けてみると開始後30分で目標の60万円を達成、1か月で目標額の10倍以上の支援をいただき、私の妄想から生まれたハーネスが実現することになりました。

――商品化してからの反響は?

【西野さん】 実際に使ってくださっているママさんからたくさんのうれしい声をいただいています。お子さんが大きくなったママさんから「私の時代にあったらよかったのに!」と言われることもあります。私自身も使っていますが、通りすがりの方から「かわいいね」とニコニコと話しかけられることも多く、明らかに誤解の目では見られていないと感じます。

 またママさん以外にも、例えば車を運転する方からは「運転中に子どもが見えやすくて助かる」という声を頂戴することもありました。商品自体を褒めていただくのももちろんですが、何よりも「子どもの安全第一 ハーネス」をきっかけに子ども用ハーネスの認知度が上がって、誤解が減っていることが本当にうれしいと感じます。

ーー今後の展開は?

【西野さん】 まだまだ「子どもの安全第一 ハーネス」で手一杯ですが、工事現場の作業員さん以外にもいろんな職業のデザインを作れたらと考えています。子どもの興味って本当に幅広いので、そうすることでよりたくさんの子どもたちが喜んで着けてくれるといいなと思います。

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 工事現場のヘルメットという一風変わったデザインの子ども用ハーネス。その裏側には、子どもの安全を第一に考える現役ママの切実な思いが込められていました。この商品をきっかけに、これから子育てをする方々が気兼ねなく子ども用ハーネスが使える世の中になるといいですね。

※子ども用ハーネスが果たすのはあくまで“命綱”としての役割です。ハーネスをつけた上で子どもと手をつなぐなど、安全確保策を講じることが大切です。