サッカー・女子国内プロリーグ「WEリーグ」で2位に付けるINAC神戸レオネッサ。ゴールデンウイーク最初の試合となった4月28日のホームゲームで快勝し、リーグ戦がクライマックスを迎える5月戦線に向けて弾みを付けました。その直近の試合について振り返るとともに、元なでしこジャパンDF川上直子氏が、自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組で感想を語りました。

 4月28日にノエビアスタジアム神戸で行われた第17節のマイナビ仙台レディース戦では、序盤から躍動したINAC神戸。同日が誕生日のなでしこジャパンFW田中美南選手が、開始6分、早速バースデーゴールを決めて先制。2分後には両サイドの果敢な攻撃参加から、最後はMF成宮唯選手が押し込み、すぐにリードを広げます。2-0で折り返した後半には、U-20日本女子代表FW辻澤亜唯選手にプロ入り初得点が生まれ、これがチームのWEリーグ通算100得点目に。さらに2分後にも辻澤選手が相手の隙を見逃さずゴールを奪い、試合を決定づけました。その後、PKでの1失点こそありましたが、交代枠をフルに使いながら最後まで奮闘したチームは、そのまま4-1と勝利。ホームに集った2000人以上のサポーターと勝利の喜びを分かち合いました。

 川上氏は田中選手の先制点について、「相手DFのコントロールミスがあったとはいえ、ゴールに向かうまでが速かった。このゴールで(チームの)雰囲気が一気によくなった」と、エースのリーグ戦7試合ぶりの一撃を評価。また、「ここ最近、 惜しいんだけど得点が取れなかったりするなかで、しっかりと追加点を決めたというのは、この後の試合展開にもすごくいい影響が出た」と、その後すぐ生まれた成宮選手の追加点の価値の大きさを語ります。

 そして、この試合でさらに評価を上げたのが、2ゴールを決めた辻澤選手でした。3月に藤枝順心高校を卒業したばかりの18歳は、最近2試合と同じく、この一戦でもアグレッシブな姿勢を見せ続けると、65分、田中選手の右からの折り返しを冷静に右足で決めれば、67分には相手GKがボールをはじいたところにすぐに詰めて得点を記録。ホームサポーターへの顔見世となった試合で、早速、存在感を示しました。

 そんな辻澤選手について、川上氏は、「いやぁ……すごいわ!」と絶賛し、この試合のMIPに選出。「まだ今のところは、そんなに相手にもめちゃくちゃ研究はされていないと思うが、ここまで2試合に先発で出た中で、若干やっぱマークされつつある。(自分の特長をいかした)パフォーマンスを発揮するのも、もしかすると難しくなってくるかもしれない。でも、やっぱり若いので、失敗を恐れずに前向きにアグレッシブなプレーをしてもらいたい」「今シーズンのリーグ戦は残り試合が少ないが、このまま手ごたえを自分でつかんでほしい」と、未来のなでしこ候補にエールを送りました。

 また、ノエスタは、辻澤選手にとって、高校時代に全日本高校女子サッカー選手権大会で2連覇した思い出の地。INAC神戸の背番号29は、試合後のインタビューで、「ノエスタはいい思い出しかないので、もっといい思い出を作れるように頑張っていきたい」とコメント。サポーターへのメッセージを求められた際は、「次も頑張るので応援よろしくお願いします!」と照れながら答え、プレーとは対照的な、あどけなさの残る一面も見せていました。川上氏は、「プレーの強気な感じと、インタビューのちょこちょこっとしゃべる感じのギャップがかわいらしい!」と、辻澤選手の魅力を語っていました。

 ラジオ番組にはサポーターからも辻澤選手へのメッセージが寄せられ、「ニュースターが出た! 若干18歳ながら、ホームデビュー戦で2ゴール。文句なしのMIP! ノエスタの申し子や!」「悪い流れになりかけた広島戦(の活躍を経て、そこ)からずっとスタメンを勝ち取り、チームを蘇らせた。とにかく勝負を仕掛けていく(のが魅力)。仮に失敗しても、そこでへこたれずに何度もチャレンジしていく姿勢が気持ちいい! 勝利のラインダンスでも久保田真生選手と2人で盛り上げるムードメーカーを担うのは最高!」など、絶賛が相次ぎました。

 2連勝のINAC神戸。ゴールデンウイークには中3日での試合が続きます。5月2日(木)には、平日ながら正午キックオフとなるホームゲームで、5位ちふれASエルフェン埼玉と対戦。この試合は『神戸子ども応援デー』として、市内の子どもたちが応援に駆け付けます。そして、GW最終日の6日(月・振休)には、3位アルビレックス新潟レディースとのアウェイ戦、優勝戦線生き残りをかけた上位決戦が待っています。

 キャプテンの田中選手は、「(逆転優勝に向けて)いい意味でプレッシャーをかけていますし、勝つだけではなく得失点のことも考えて大量得点を目指してやっている。ぜひノエスタに足を運んでくれると、本当に力になるので、最後まで応援よろしくお願いします!」と、仙台戦後のインタビューでスタジアムへの来場を呼びかけていました。

 1試合消化の多い首位・三菱重工浦和レッズレディース(勝点47)との勝点差は7。WEリーグでの逆転優勝、皇后杯との二冠達成のため、絶対に勝たなければいけない戦いが続くINAC神戸(勝点40)。復活遂げたエースとともに、前線で輝くニューヒーロー・辻澤選手が、リーグ戦残り5試合のカギを握ることは間違いなさそうです。