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 昨夏にエルリング・ハーランドの穴埋め役として獲得したものの、その準備期間中に精巣がんが発覚し、その後2度の手術を経て復活を果たした、セバスチャン・ハーラー。その激動のシーズンも残すところあと1試合となり、会見の席にてボルシア・ドルトムントのエディン・テルジッチ監督は、改めてこのハーラーが歩んできた1年について振り返った。闘病生活と懸命なリハビリを経て、1月に復帰を果たしたコートジボワール代表は、「我々の今シーズンにおいて最も偉大なストーリーを描き続けている。あの状況から非常に多くの意思と勤勉さ、ポジティブなエネルギーを放ち続けることは並大抵のことではない」と称賛。

 確かにクラブにおけるハーラーの重要性は、復活直後から如実に示されたものではあった。第17節マインツ戦ではいきなり1アシスト、さらに19節フライブルク戦では復活弾も決めるなど、順風満帆な出だしを切ったが、その後1ヶ月は音沙汰なし。これが批判的な一部外部からの声につながっていく。しかし本来の力を取り戻すために共に付き添い取り組んできたテルジッチ監督は、「練習中に彼が周囲とうまく呼吸を合わせられるように手を尽くしていった」と説明。攻撃パターンを熟知させ、それをハーラーはしっかりと受け止め実践に移した。

 それが後半戦からのドニエル・マレンやカリム・アデイェミらの復調という相互作用を生み出しただけでなく、時間を追うごとに自らの成績にも影響が及ぼされはじめ、直近9試合では8得点4アシストをマーク。ここにきてのドルトムントの首位再浮上に大きく貢献している。しかしまだ目指すところには到達していない。それはタイトルを実際手にしていないクラブとしての見方のみならず、自らも「まだまだだよ」とアウグスブルク戦で語ったことからも示された。それでも苦難を乗り越えここまで到達したこのシーズンは、まさに指揮官の言う通りに「最大のストーリー」だろう。あとはそれを優勝という形で有終の美を飾りたい。