7月、鈴木保奈美コメディ初挑戦となる主演舞台『逃奔政走‐噓つきは政治家の始まり?‐』が京都劇場で上演される。5月7日(火)、カンテレ本社(大阪市・北区)で取材会を開き、人気の若手コメディ作家・冨坂友が作る舞台への思い、役柄など見どころを語った。

理想に燃え、政治の世界に身を投じた女性県知事・小川すみれ。さまざまなしがらみや理不尽なトラブルに巻き込まれ、切り抜けようとするが、その策は裏目に出続け、どんどんピンチに陥っていき…。この物語をスリリングに、スピード感あふれるコメディとして描くのが脚本・演出の冨坂友。屁理屈シチュエーションコメディ劇団アガリスクエンターテイメントを率い、今、ポスト三谷幸喜と呼ばれる注目の人だ。

鈴木が「感情のアップダウンがない穏やかな方で、かつ、とても研究熱心」と話す冨坂との出会いは2018年。「初めて冨坂さんの舞台を拝見して、こんなにおもしろい人たちがいるんだとビックリして。そして、あ、私も出たいなぁとシンプルに。まさか本当にお仕事出来るとは思いませんでした」。その作品の魅力を「ち密なセリフが非常に計算されていて、かつわかりやすく、おもしろい。たくさんの情報量が見事に整理され、散りばめられた伏線が見事に回収されて。それと登場人物がみんな個性的で、どの人も魅力的でおもしろいんです。そこが素晴らしいなと思いました」と語る。


舞台への情熱から、鈴木は“部活”という名の演劇サークルを作り、自ら周囲に声をかけて仲間たちと舞台への準備を開始。そして2022年に『セールスマンの死』、2023年に『レイディ・マクベス』の舞台に出演。「どちらの作品も舞台の素晴らしい先輩に囲まれて、本当に毎日毎日学ぶことばかりでした。あと、映像と違って実際に目の前にお客様がいらして、舞台の場合OKをいただくのはお客様から。最終的に決定権はお客様にあるという感じで、力のベクトルが全く違うことがとてもおもしろいです」と新たな発見も。
そんな中、2022年にフジテレビの生ドラマ『生ドラ!東京は24時』で冨坂が脚本・監督に抜擢され、主演の鈴木と再会。このドラマは『逃奔政走』の「エピソードゼロ」と言える。女性の活躍を応援するNPO代表でコメンテーターだった小川すみれが、その後、政治の世界に身を投じて…という流れだ。役柄は「まじめで理想に燃える、あまり器用ではない人、と私は考えています。社会的な責任も大きくなり、彼女自身も成長もしているんだけれど、成長し切れていない部分でちょっとおっちょこちょいなことになったりする」。自分の共通点を「正義感は強い方かなと思いますけれども。あまり裏付けがなく、言いっぱなしになるところじゃないでしょうか(笑)」。


今回の出演に当たり、鈴木は東京都の都議会に見学に行き、小池都知事の演説も聞いた。「お芝居をする人間が参考にすることは、たたずまいというか、座ったり立ったりなさっていらっしゃる雰囲気、それから、どういう方たちが議場に来ていて、いろいろな役職の方がどんな距離感で接しているのかとか。小池都知事の存在だけに限らず、議会全体の雰囲気が味わえたので、それは舞台に反映できると思います。観てくださるお客様に、議会ってどんなところなんだろうとか、少しでも興味を持っていただけたら、それは私たちの仕事の意義なのかなとは思っています」。

今回は初めてのコメディに挑む。「コメディは大好きです」と言う彼女は、最近もアガリスクエンターテイメントの舞台を観に行った。「クスって笑うことはよくあると思いますが、本当に声を出して私も笑いましたし、他のお客様も声を出して笑ってらして。きっと『逃奔政走』もそういうお芝居になると思います。でも、お客様の笑い声がなかったら、と思うと眠れなくなりそうです(笑)」。とは言え、まだ台本はなく、稽古はこれから始まる。「そこで冨坂さんはどういう風なアプローチをされていくのか、期待しています。私はとにかく全身を使って舞台の上を動き回ろうと思っています」ときっぱり。
この公演を楽しみにされている人たちに向けてのメッセージを。「私は2018年に冨坂さんの『卒業式、実行』という舞台を拝見しまして、なんておもしろい舞台を作る人がいるんだろうと。本当におこがましいんですが、もっといろんな人にこのおもしろさを観てもらいたいと思いました。そして一緒にやりたいなぁと思ってきた舞台が、今回やっと実現するので、私自身も本当に今楽しみです。シンプルに約2時間、夢中になって観て、笑っていただける作品に絶対なると思いますので、是非、楽しみに来てください。あと、いろんな伏線が貼ってありますから、2回3回観に来ていただいても、おもしろいと思います」。

取材・文/高橋晴代



【公演概要】
舞台『逃奔政走-嘘つきは政治家のはじまり?-』
【日程】7月20日(土)・21日(日)[全3回公演]
【会場】京都劇場
【出演】鈴木保奈美、寺西拓人、相島一之、佐藤B作ほか
公式HP:https://www.ktv.jp/event/touhonseisou/