昨今、ユニバーサルツーリズムへの関心が高まってきているそうです。

ユニバーサルツーリズム
高齢や障がい等の有無にかかわらず、すべての人が安心して楽しめる旅行

国土交通省官公庁ホームページより

倉敷市では、1985年から障がい者と医療・福祉の専門家やボランティアがともに貸切列車で1日旅行を楽しむ観光列車「ひまわり号」が毎年運行されています。(新型インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症の影響で中止した年もあり)

2024年も5月26日(日)に倉敷市を出発し、兵庫県姫路市へひまわり号37号が運行する予定です。当日は、障がいのある当事者1名につき2〜3名のボランティアが同行してともに旅をします。

ひまわり号37号姫路の旅では、現在ボランティアを募集中とのこと。

ひまわり号の企画趣旨やボランティアの活動内容について、「ひまわり号」を走らせる倉敷実行委員会に話を聞いてきました。

「ひまわり号」とは

ひまわり号は、1982年に東京で始まった障がい者専用の貸切団体列車です。

当時は、列車や駅のバリアフリーが現在ほど普及しておらず、障がい者にとって列車に乗って旅することには多くの困難がありました。

そのようななか、障がい者やその家族・ボランティア・労働組合が中心となって「ひまわり号」の運行が始まり、全国に普及。倉敷市では、1985年に初めてのひまわり号が倉敷駅から広島駅間で運行されました。

今年(2024年)は37回目の運行となります。

ひまわり号37号宣伝チラシ

乗車申込のご案内

ひまわり号37号姫路の旅の募集人員、運行日程、参加費、参加申込方法、申込締切などについては、以下の画像を確認してください。

乗車申込の案内

障がい者のかたの申込は締め切りました。

募集しているボランティア

当日同行するボランティアは、以下の5種類を募集しています。

  1. 介助ボランティア
  2. 設営ボランティア
  3. レクリエーションボランティア
  4. 記録ボランティア
  5. 会場ボランティア

詳しい活動内容は、以下の画像を確認してください。

ひまわり号のボランティアについて

なお、ボランティアは介助の経験がなくても申込み可能です。

5月5日(日)午後1時から、くらしき健康福祉プラザにてボランティア教室が開催されるとのこと。参加するとより具体的に介助のイメージができそうですね。

「ひまわり号」を走らせる倉敷実行委員会へのインタビュー

ひまわり号37号姫路の旅について、「ひまわり号」を走らせる倉敷実行委員会 会長の西尾隆広(にしお たかひろ)さんにインタビューしました。

西尾隆広さん
西尾隆広さん

──ひまわり号とは、どのような企画ですか。

西尾(敬称略)──

障がい種を問わず、さまざまな障がいのあるかたとボランティアがともに旅をする貸切列車の旅です。

身体障がい(視覚・聴覚・肢体不自由・病弱)だけでなく、知的障がいや精神障がいのかたも参加しています。

倉敷では、1985年からひまわり号の運行が始まって、2024年は37回目の開催となります。

──「ひまわり号37号姫路の旅」の企画趣旨を教えてください。

西尾──

ひまわり号で姫路に行くのは、5回目となります。姫路城は眺望がきれいですし、周辺には美術館や動物園があるので散策しやすいスポットです。

旅の細かなスケジュールはあえて作っていません。

障がいのある当事者の多くが「列車に乗ること」を一番の目的に参加しているので、それ以外の時間は当事者とボランティアが自分たちのペースで旅を楽しんでくれたら良いと思います。

写真提供:「ひまわり号」を走らせる倉敷実行委員会
写真提供:「ひまわり号」を走らせる倉敷実行委員会

──障がい者の募集人数50名に対して、ボランティアを142名も募集されるのですね。

西尾──

障がい者の参加者1名に対して、2〜3名のボランティアが同行する予定でいます。

歩行や車いすの介助、医療的ケアが必要なかたもいるので、どの参加者も家族の人に安心して送り出してもらいたいと思っています。そのため、この人数比で長年ひまわり号を運行してきました。

ボランティアのなかには専門的な医療知識のあるスタッフも同行します。

──「ひまわり号37号姫路の旅」を通して、ボランティアにどのようなことを感じてほしいですか。

西尾──

まずは、「障がいのある人と接する」という経験をしてほしいです。

ひまわり号で障がいのある当事者と1日ともに活動するなかで、障がい者から学ぶことがたくさんあると思います。

写真提供:「ひまわり号」を走らせる倉敷実行委員会
写真提供:「ひまわり号」を走らせる倉敷実行委員会

すると、次に街中で困っている人を見かけたときに「これならできそう」と声を掛けられるようになるはずです。

困っている人を見かけたときにサッと手を差し伸べられる人が一人でも増えることで、倉敷の街がもっと温かく優しい街になってくれたらうれしいですね。

──読者にメッセージをお願いします。

西尾──

ひまわり号は過去36回の運行を通して、障がい者もボランティアも毎年参加されるリピート者が多い企画です。

「また来年も、ここに参加しよう」と思ってくれることを、とてもうれしく思っています。参加を迷っているかたにはぜひ一歩踏み出す勇気を持ってほしいです。

初めて参加されるかたでも、障がい者もボランティアもともに気持ちよく楽しく旅ができるよう、実行委員が全力でサポートします。

参加申込をお待ちしています。

ひまわり号37号のポスターを持つ西尾さん

おわりに

私は前職で特別支援学校の教員をしていましたが、障がいのある子どもたちにとっても校外学習は貴重な外出の機会でした。

学校を卒業した後も、ひまわり号のような取り組みに参加できることは障がいのある当事者の余暇支援として大変意義のある活動だと思います。

写真提供:「ひまわり号」を走らせる倉敷実行委員会
写真提供:「ひまわり号」を走らせる倉敷実行委員会

また、西尾さんから「障がい者から学ぶ」という言葉が語られましたが、障がいのある当事者にとっても支援者に支援を求める練習ができる貴重な機会になるはずです。

この春は、ひまわり号37号のボランティアをとおして新しい経験をしつつ、貸切列車で姫路へ行ってみませんか。

著者:高石真梨子