高速道路を走行中に鉄道路線を示す案内標識を見ることがあります。どういう意味があるのでしょうか。

トンネル走行中に「京王線」? 線路見えないのに…

 遠方へ出かけるのに便利な高速道路ですが、走行していると時々「京王線」や「東武スカイツリーライン」など、鉄道路線の案内標識を見るときがあります。
 
 なぜ、鉄道路線をクルマ向けに案内するのでしょうか。

 いくつか種類がある標識のなかでも高速道路の案内標識は、さまざまなものがあります。

 ICやSA・PAなど、高速道路上の施設名称とそこまでの距離を示すもの、都道府県境付近では自治体名を示すものもあります。さらには、付近にある景勝地や山などを案内するものなど、役に立つ表示だけでなく、観光やドライブを楽しませるものまで存在します。

 一方で、鉄道路線の案内標識はなぜか「路線」の案内です。「駅」はともかくとして、高速道路の利用者には路線案内はあまり意味がないのではないかとも考えられます。

 では何のために鉄道路線の名前が書かれた案内標識を設置するのでしょうか。首都高速道路の担当者は以下のように話します。

「首都高上に鉄道線の案内が設置されている理由については、交通上の手掛かりを与える目的で、おおまかな地理関係の目安で設置しています」

 場所にもよりますが、高速道路では騒音規制などのために大きな遮音壁が設けられていることでしばらく周りの風景が変わらないときや、複数のトンネルを抜けるといったことがしばしばあり、非常時に現在地を知りたいというときに迷うことも考えられます。

 そんな時に「京王線」「東武スカイツリーライン」などの表示があれば、おおよその現在地を伝えることができます。その目安として設置しているというわけです。

 実際に首都高神奈川1号横羽線では生麦JCT〜汐入出入口間には「鶴見線」標識があります。その下には標識通りJR鶴見線が通っています。

 さらに横羽線の場合では、しばらく東京方面に進むとJR南武線(浜川崎支線)が道路の下を通っていますが、ここにも「南武線」と書かれた案内標識が設置されています。

 また、首都高速中央環状線のうち、大井JCT〜高松入口間にある山手トンネルでは「京王線」という案内標識があります。

 標識通り実際には京王線が通っているのですが、山手トンネルは地下のため、走行中に京王線の線路を確認することはできません。

 なお、全長18km以上に及ぶ山手トンネルでは京王線以外にも、小田急線や京王井の頭線の看板などがあり、さらには「初台」「中目黒」などといった具体的な地名も各所に掲げられています。

 このように高速道路にある鉄道案内や地名案内は、走行中に地理関係を把握する手掛かりとして設置されています。

 事故や故障などで緊急通報時に場所を聞かれた場合、これらの標識を参考にすれば、「南武線と交差する場所の付近」「山手トンネル内の京王線の近く」などと詳細に場所を伝えることができるのです。

 万が一のために、これらの標識に目を通しておくことで、いざという時に役に立つかもしれません。