ホンダは、一時国内での販売をやめていた高級ミニバン「オデッセイ」を2023年12月に復活させました。あわせて一部改良も行い、さらに魅力を増した新型オデッセイについて、内装の使い勝手を中心に「ママさん目線」でチェックします。

新型「オデッセイ」をとことん「使用」してみました

 一度は日本から姿を消してしまったオデッセイですが、家族の喜びだけでなく自分自身の喜びも重視する人たちの熱烈なラブコールに応えるかのように、2023年12月に日本復活を遂げました。

 快適な室内空間×流麗なスタイリングという、独自の価値を最大限に実現した新生オデッセイは、確かに存在感を増したフロントマスクや、スポーティ感を追求したアルミホイールを履くなど魅力的なスタイリング。では、快適な室内空間の方はどのような進化を遂げているのでしょうか。

 今回は試乗記ならぬ、“使用記”として、新型オデッセイをチェックしてみたいと思います。

 ホンダの最上級ミニバンとなるだけに、まず気になるのは2列目シートの進化です。

 新型オデッセイは全車が2列目にキャプテンシートを備える7人乗り。飛行機のファーストクラスか、はたまた温泉リゾートで見るような豪華なマッサージチェアのように、たっぷりとドレープが入った本革シートで、見た目からしてすでに座り心地が良さそうです。

 身体を預けてみると、フカッとソフトな感触に包まれ、左右のアームレストがほどよく腕を支えてくれます。

 ベースグレードは、FABTECTという撥水・撥油機能のあるファブリックシートになり、水滴や食べこぼしなどの汚れが拭き取りやすいのが特徴。小さな子供がいるファミリーは、こちらの方が嬉しいかもしれません。

 左右ともに4ウェイパワーシートで、新型ではオットマンとリクライニングの操作も電動化。スイッチがたくさんあるので、最初はよく見ないと意図しないところが動いたりしましたが、慣れてくれば無段階の電動調整は自分の体格や好みの姿勢にピタリと合わせることができ、良い塩梅になります。

 とくに、背もたれに中折れ機能があり、首や肩のラインにフィットさせることができるのには感激。おかげでヘッドレストに頭をラクに預けることができました。

 オットマンのサイズは、足の長い人にはやや足りないかもしれませんが、身長165cmの筆者(カーライフジャーナリスト まるも亜希子)ならちょうど足首のあたりまで支えてくれます。

 寒い冬でも、シートヒーターが座面だけでなく背もたれまで全体に温めてくれるのもいいところ。リクライニングを最大まで倒せば、もうこのまま眠りに落ちてしまいそうな姿勢になり、車内で休憩することが多い人にピッタリです。

 起きて活動する際には、そのままでも内側のアームレストに小さいながらもフラットなスペースがあり、スマホなどちょっとした小物を置くのにも良さそう。

 折りたたみのセンターテーブルを出せば、安定感のあるドリンクホルダーが2名分ついています。リクライニングをしていると、そのままではドリンクに手が届きにくいので、もうちょっと高い位置にあると嬉しい気もしますが、ドリンクを置かない時には小物入れとしても使えそうです。

 ドリンクホルダーはスライドドア内側にも備わり、シーンによって使い分けられるようになっています。

 ちなみに今回の新型オデッセイは運転席用にプッシュオープンタイプのドリンクホルダーがあるほか、センターコンソールに引き出し式のドリンクホルダー、ペットボトルやマイボトルが入るドアポケット、3列目シート左右にもドリンクホルダーがあるので、1台に合計11個ものドリンクホルダーがあるということに。

 それぞれ小物入れとしても使えるので、ガムやリップクリームなど細々したものを入れたり、車載タイプの加湿器や空気清浄機などを常備したい人にも使いやすくなっています。

 また、それぞれの席に急速充電タイプのUSBチャージャー(Type-C)が備わっており、スマホやタブレットを充電しながら使うことができます。センターコンソールの後部にはType-AのUSBチャージャーもあります(一部グレード)。

 なお純正アクセサリーとして、ホンダアクセスが3列目シート用のUSBチャージャーを用意しています。

新型「オデッセイ」がママさんドライバーにもオススメな理由とは

 続いて運転席まわりを見てみましょう。インパネのデザインは大きくは変わっていませんが、従来より大きな11.4インチのディスプレイが選べるようになったほか、シフトレバーがプッシュ操作のエレクトリックギアセレクターに変わったのが特徴です。

 おかげでニョキッとした突起物がなくなり、よりスッキリとした印象を受けます。

 収納スペースは変わっていませんが、助手席前にあるインパネアッパーボックスはリッド付きながら大容量。ボックスティッシュもすっぽりと入ります。

 その下のグローブボックスも大容量で、ゴチャゴチャしがちな小物も隠して収納できるようになっています。

 そしてセンターコンソールの下部に、スマホなどが置きやすいトレイがあり、引き出すタイプのドリンクホルダーもあります。こちらも高さが低めなので、手に取る際には視線移動が大きくなってしまいますが、使わない時にはすっきりと格納できることで、運転席と助手席を移動できるサイドウォークスルーがしやすくて便利。

 一部グレードには立派なセンターコンソールボックスが備わりますが、それがなければ2列目・3列目に移動できるセンターウォークスルーもしやすくなっています。

 最近はウォークスルーができないミニバンもあるため、やはり雨の日などにいちいち車外に出なくても、室内で席の移動ができるのはラク。

 チャイルドシートを装着していればさらに、子供と一緒にスライドドアから乗り込んで、子供を座らせたら自分はそのまま運転席に移動できるので、乗り降りの煩わしさが軽減されます。

 さらに、2列目・3列目シートに子供を乗せている時に助かるのが、運転席から後ろの様子を確認できるミラーが天井に備わっていること。

 鏡面がちょっと湾曲していて、小さいので3列目の子供の表情までハッキリと見えるかどうかは天候など明るさ次第、というところなのですが、少なくともちゃんと座っていることは確認できるので、それだけでも安心です。

 このミラーはサングラスホルダーも兼ねていますが、フレームが大きめのサングラスを愛用しているからか、一度もここに収まったことがありません。

 これは他メーカーのサングラスホルダーでも同様で、オデッセイだけが使いにくいのではありませんが、フレームが細いメガネやスポーツタイプのサングラスは収まることが多い印象です。

 さて、最後に新型オデッセイのラゲッジを見てみましょう。

 まず、開口部がほぼスクエアな形状で、低床設計で深さがたっぷりとあるのが目をひきます。

 3列目使用時にはさすがに奥行きはほとんどありませんが、この深さのおかげで旅行バッグもすっぽり。日常の買い物程度には十分です。

 もう少し荷物をたくさん積みたいときは、3列目シートが軽い力でパタパタと転回し、床下格納できるのがオデッセイの強み。片手での操作は難しいかもしれませんが、これでフロアがすっきりとフラットになり、2列目シートを最前端にスライドさせれば、家具なども運べるほどの大空間が生まれます。

 試しに靴を脱いで筆者が乗り込んでみたところ、コンパクトな折りたたみテーブルを置いて、くつろぐ程度の広さはありました。

 バックゲートは大きいので手動だと重いですが、1695mmの低全高なので高さはLクラスミニバンより手が届きやすく、閉めるのも最初に勢いをつければスムーズ。ただ、グレードによってはハンズフリーアクセスパワーテールゲートが装備されているので、手を使わず足の動作だけで開閉できて便利です。

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 そんなわけで、豪華になった内外装に注目が集まりがちな新生オデッセイですが、室内の使いやすさもしっかり両立していることがわかりました。

 子育て世代のファミリーにも、十分に使いやすく長く乗れるミニバンだと思います。