一般社団法人日本能率協会は、「当面する企業経営課題に関する調査」を実施し、結果を発表した。その内容を一部抜粋して紹介する。

本ニュースのサマリー
  • 企業が当面する経営課題は「現在」「3年後」「5年後」のすべてで「人材の強化」が最多
  • 【現在の課題】は「人材の強化」が急激に高まる。「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」も増加傾向
  • 【3年後の課題】は「人材の強化」と46.4%が回答。「デジタル技術の活用・戦略的投資」は減少傾向
  • 【5年後の課題】は「人材の強化」が最多。「ブランド力の向上」の重視度も増加

企業が当面する経営課題は「現在」「3年後」「5年後」のすべてで「人材の強化」が最多

回答者に、自社が当面する経営課題を、「現在」「3年後」は上位3つまで、「5年後」は1つだけ、下図の20の項目から選択してもらったところ、「現在」「3年後」「5年後」のすべてで「人材の強化」が最も重視度の高い経営課題となった。

「人材の強化」は、約半数の企業が「現在」の経営課題と位置付けている。また、「3年後」でも同様に約半数の企業が、「5年後」でも約15%の企業が最重視課題と位置付けるなど、多くの企業において直近の課題であるだけでなく、長きにわたる課題になると捉えられていることがわかる。

画像:一般社団法人日本能率協会 2024年4月11日 ニュースリリースより引用

【現在の課題】は「人材の強化」が急激に高まる。「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」も増加傾向

「現在」における経営課題のトップ3は、第1位「人材の強化」(48.9%)、第2位「収益性向上」(44.9%)、第3位「売り上げ・シェア拡大」(32.0%)であった。

過去3年間の推移を見ると、第1位から第3位までの項目に変わりはないものの、「人材の強化」が昨年から7.8ポイント増加したことで順位が入れ替わり、昨年の第2位から第1位となった。
他に、「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」「株主価値向上」は、昨年と比べそれぞれ、2.3ポイント、3.0ポイント、割合が増え、3年連続で増加している。
「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」の重視度の増加は、人材への重要度が高まってきていることのひとつの表れとみることもできる。「株主価値向上」は、取り組みの有無が投資家の関心や企業の評価に直接的・間接的に繋がるため、経営層の中でも優先的に取り組むべき課題であるという認識が高まっていることが考えられる。

画像:一般社団法人日本能率協会 2024年4月11日 ニュースリリースより引用

【3年後の課題】は「人材の強化」と46.4%が回答。「デジタル技術の活用・戦略的投資」は減少傾向

「3年後」の課題については、第1位「人材の強化」(46.4%)、第2位「収益性向上」(30.1%)、第3位「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」(28.0%)であった。

「人材の強化」は第2位と比べ15ポイント以上高く、圧倒的に多くの企業が課題と捉えていることが分かる。また、過去3年間の推移を見ると、1年ごとに約5ポイントずつ増加しており、重要性が急激に高まっていることも見てとれる。他に、「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」(+2.7ポイント)、「技術力・研究開発力の強化」(+2.0ポイント)も昨年より割合が増加している。

反対に、「デジタル技術の活用・戦略的投資」は、一昨年・昨年に続けて割合が減少し、順位を下げている。すでに多くの企業で取り組みがなされていること、また技術の進化のスピードが速く企業側でも3年後にどのような状況を迎えているかを認識できず、課題と捉える企業が減少したことが想像される。

画像:一般社団法人日本能率協会 2024年4月11日 ニュースリリースより引用

【5年後の課題】は「人材の強化」が最多。「ブランド力の向上」の重視度も増加

「5年後」の課題は、第1位「人材の強化」(15.3%)、第2位「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」(11.7%)、第3位「CSR、CSV、事業を通じた社会課題の解決」(8.3%)であった。

昨年からの変化としては、「人材の強化」が4.6ポイント増加し最重視課題となったこと、また「ブランド力の向上」(+3.2ポイント)が増加したことが挙げられる。

「ブランド力の向上」は、コーポレートブランディングの必要性が浸透するなかで、すべての事業推進にかかわることとなる企業価値向上を、5年後の課題として想定する企業が増加していることが考えられる。

画像:一般社団法人日本能率協会 2024年4月11日 ニュースリリースより引用

調査概要

■調査時期:2023年11月13日〜12月8日
■調査対象:JMAの法人会員ならびにサンプル抽出した全国主要企業の経営者(計5,004社)
■調査方法:郵送調査法(質問票を郵送配布し、郵送およびインターネットにより回答)
■回答数:回答数528社
■回答率:10.6%

ニュース情報元:一般社団法人日本能率協会