ライフハッカー・ジャパンとBOOK LAB TOKYOがコラボ開催するトークイベント「BOOK LAB TALK」。第36回目のゲストは、『自身の価値を最大化する 最強キャリアアップ術 自分広報力』の著者・金山亮(かなやま・りょう)さんです。

20年余りにわたって戦略広報・戦略PRに携わり、現在はデロイト トーマツ グループの執行役員として、企業全体のブランド、マーケティング、広報、CSRなどの領域を担当している金山さん。

名だたる企業のリーダーを支えた「世界標準の戦略PRスキル」を、ビジネスパーソンが自分個人のために活用できたなら、その先にはどんな風景が見えてくるのでしょうか。

この日のトークでは、書籍で語られたことに加えて新たなキーワードと共に、「自分広報力」を構成する3つの要素を紐解いてくれました。

「自分広報力」の本質は、経営の本質でもある

そもそも「自分広報力」とは、一体どのような力なのでしょうか。

周囲に認められながら、自分の価値を発揮し、キャリアアップをしていくそのために求められる発想や行動を、『自分広報力』と総称しています

その本質は、一言でいうと『仲間(ファン)づくり』です」(金山さん、以下同)

一般企業が行なうマーケティング広報やブランディングといった発信も、いわば仲間づくりであり、ファンづくり。

その会社の商品を買う人、株を買う人、取引する人を仲間と捉えれば、仲間がたくさんいる企業の方が発展していくのは当然です。そう考えると、経営の本質は「仲間づくりだとも言える」と金山さんは指摘します。

「これからは、会社の中でも1人ひとりが自分株式会社のCEOとして、自身のキャリアに責任を持たなくてはいけない時代になります。

そのためには広報やマーケティングの専門家でなくても、「自分株式会社」の仲間をどうやって増やすかを考えるべき

応援してもらい、助けてもらい、コラボをしてもらって、自分の仕事をより大きな形で成果に結びつけていきましょう」

価値は周囲との関係で決まる。「ポジショニング」とは?

「自分広報力」で仲間を増やすと言うと、自分を周囲に認めてもらうための自己アピール術を想像する方もいるかもしれません。

しかし金山さんによると、自己アピールに走る前に明確化すべきことがあります。それは、自分自身の価値をつくる「ポジショニング」です。

周囲の関心・困り事と、自分の強み・経験・スキルが重なったところに一つのテーマが見出せると、そこがあなたの『ポジショニング』になります。

この重なり合った部分が、周りの人から見たあなたの価値であり、立ち位置になるわけです」

ものの値段や株価を見ればわかる通り、価値というのは極めて相対的なもの。自分への評価も絶対的なものではなく、周りとの関係性で決まります

そのため、ただ闇雲に自己アピールをしても、押し売りのように思われて敬遠される可能性が大。空回りせずに自分の価値を発揮するためには、相手の状況や問題意識と、自分の知見やスキルが掛け合わされるテーマを探っていく必要があるのです。

「ユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどのマーケティングで大きな成果を上げられた森岡毅さんは、『文脈によってどんな特徴でも強みになる』とおっしゃっています。ここでの『強み』とは、私の解釈では『相手にとっての価値』。

つまり『文脈』が重要であるということです。では『文脈』とは何かと考えると、相手が見ている『風景』なんですよね」

たとえば、同じオフィスで一緒に仕事をしているメンバーであっても、上司であるAさんと、転職を控えたBさんと、新入社員のCさんが、同じ景色を見ているとは限りません。

そのような状況では、周りの人たちがどんな風景のなかで仕事をしているのかをよく理解したうえで、「自分はこれができます。お役に立てませんか?」と働きかけていくといい、と金山さん。

「そういう意味で、この本では『口1耳9』での雑談の機会を増やすことを提案しています。

営業でも企画でも『あなたの見ている風景って、こうですよね。いろいろ大変ですよね』と、最初に共感できるかどうかが大事

いわば、お互いの風景の擦り合わせ。共感を手がかりに、自らの価値を効果的に発揮できる「ポジショニング」を固めることが、「自分広報力」の基本になると金山さんは語ります。

意識を変える「メッセージ思考」で仲間を増やす

風景の擦り合わせをしたうえで自分の「ポジション」を固めると、自分も発信しやすくなり、周りの人もそこに合わせて発信してくれるようないい空気が、そしてさまざまな動きが生まれていきます。

共に新しい風景を見ようという「仲間」が、どんどん増えていくわけです。

ここで重要になるのが、金山さんが「メッセージ思考」と名付けた思考法。コミュニケーションのプロの間では、メッセージという言葉は固有の意味を持つと話します。

「広報やコミュニケーションで使われる『メッセージ』は、相手の思い込みや固定観念を打ち破り、自分の目的に沿った意識や行動の変化を起こしていく、そういうきっかけをつくる言葉です。

もっと突き詰めて言うと、人を動かすための言葉ですね」

「人はなかなか変わらない」と言われる通り、人の意識を変え、動かすというのは生易しいことではありません。しかし「仲間づくり」をするためには意識と行動の変化を促す必要があり、メッセージはそのための言葉です。

そしてメッセージを効果的に伝えるためには組み立て方のパターンがあり、相手の固定観念を揺さぶる「将来仮説」、解決策を示す「ソリューション」、自分の優位性を主張する「差別化」といった要素が必要とのこと。

本書では、Amazon創業者ジェフ・ベゾスやホリエモン(堀江貴文さん)のメッセージが、これら3つの要素で解説されています。メッセージの構成について掘り下げたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

自分らしい「志」は臆せず、大きく発信しよう

本書の最終章で、金山さんは「『アスピレーション』の旗を掲げよう」と説いています。「アスピレーション」とは、自分自身の内発的な思いに裏打ちされた志のこと。

「生きていると『これはやっておきたい』と胸の底から湧き上がるような何かが、必ず出てきます。そこを本当に大切にしていくと、ものすごいパワーになる。

そういうものを旗として掲げると、いま眼の前にいる人を超えた仲間、見えない仲間とつながっていくきっかけができます」

変に遠慮せず、自分らしい志をいろいろな機会に話していると、「面白そうだな」「一緒にやろう」と言ってくれる仲間が集まってくるといいます。

サッカーの日本代表監督を務められた岡田武史さんの「モノは大きくなるほど重くて動かすのが大変だが、人の心というのは、大きな話をする方が動くんだ」という言葉が好きだ、と金山さん。日本人は大風呂敷を広げることを敬遠しがちですが、本当にやりたいことは、照れずに、でっかく共有するくらいでちょうど良いのかもしれません。

セッションの最後、「自分広報力とは?」という問いに、「利他 Serving Others.」と答えてくれた金山さん。

「『自分広報力』の起点は、いかに相手の役に立つかという発想です。

利他の心でやっていくと仲間が増えて、結果的には自分のやりたいことが、より大きな形でできるようになっていきます」

利他の視点でものごとを見てみると、実はそれが発信力につながる──。「自分にはまだ早いと思わずに、思い切って発信してみてほしい」という金山さんの言葉に励まされました。

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https://www.lifehacker.jp/regular/book_lab_talk/ 「BOOK LAB TALK」の記事を見る

Source: BOOK LAB TOKYO