「ひっぱりだこ飯」が名物の弁当店「淡路屋」(本社:神戸市東灘区)から、4月1日・エイプリルフール限定の新商品「ひっぱりいか飯」が誕生。たこ飯のエキスパートが手がける「いか飯」は、ネット予約分が即完する反響を呼んでいる。

今回、早くも幻になりつつある「ひっぱりいか飯」の試食品を特別にご用意いただいたので、筆者が使命感を持ってその詳細をお伝えしたい。

■ 「本当にやる方がおもしろい」社員の一言がきっかけ

明石海峡大橋の開通を記念し、明石発祥といわれる蛸壺をイメージした「ひっぱりだこ飯」を1998年から販売する同社。創業120年の老舗ながら、常におもしろい企画を考え、毎年エイプリルフール前には「どんなユニークな嘘をつくか」の議論が社内で起きるという。

だけど嘘をつくだけではどこか平凡。ある社員からポツリと出た「嘘みたいなことを本当にやる方が一層ユニークでは?」という意見により、まさかの自社パロディ商品が誕生した。

このことが公式に発表されると、SNSでは「イカれて・・・いや、イカしてる」「みなさんを喜ばせる良いエイプリルフール」「こういう遊び心をねじ込んでくる淡路屋さん大好き!」と反響をよび、オンラインショップでの予約受付は1日半足らずで予定数に達する事態に。

残されたチャンスは4月1日の店頭発売のみだ。

■ 食べてみると…「あぁ、淡路屋さんだ!」

通常の「ひっぱりだこ飯」といえば、惜しげもなく盛り付けられた大ぶりの煮だこと老舗ならではの安定した味付けで、いつ食べても変わらぬおいしさだと人気。さて、「ひっぱりいか飯」はどうかというと・・・全体的に白い!

壺はいつもの茶色から、いかをイメージした白色に(図柄はたこのまま)。そして普段たこの旨煮が収まっているところに、白いものが乗っている。一瞬「たこ!? やっぱりエイプリルフールだった!」と思うかもしれないが、吸盤の形状から紛れもなく「いかの旨煮」であることが分かる。いかの吸盤は獲物をしっかり捉えて離さない役割を持つため、たこの吸盤とは少し様子が異なる。

使われているのは紋甲いかとのこと。吸盤のプチプチとした噛み心地が、腕のプリプリした食感と相まって大変においしい。たこがいかになっても変わらない、ちょうどいい塩梅の味付けに、「あぁ、淡路屋さんだ!」と安心する。

脇を固めるのは菜の花の醤油漬、しいたけ煮、たけのこ土佐煮、穴子煮、錦糸玉子、そして醤油で炊いた茶色いご飯と、おなじみの顔ぶれ。ただ、壺の底に潜むお楽しみ「タコ天」は「イカ団子」に変わっている。

壺のなかからたこはすっかり姿を消していた。

■ 「誰も見てへんようなとこまで…」細かい仕掛けもニクい

蓋部分の掛け紙にも遊び心がたっぷり。目印は同社の顔的存在のたこを喰うような着ぐるみのいか。よく見るとベタ塗りではなく、まだらな筆致が見てとれ、さらに触腕(いちばん長い2本の腕)には吸盤の一部が描かれるなど、いかの特徴が表現されている。

「イラストを担当した社員に『ほんまのイカに忠実にな!』って僕が言うたんです。図鑑かなんか見て描いたそうです」と話すのは、同社の柳本副社長。よく見るとバーコードにも秘密が。「ひっぱりいか飯は4月1日発売やから、0401。その前の10も、いかの腕の数と合ってるでしょ! こういう誰も見てへんようなとこまでこだわって、おもろいことやるんです」。

世界がかわいい嘘に溢れる日。日本ではいか壺飯のうまさに多くの人がうなる日になりそうだ。タコと手(?)を取り合うイカの今後の活躍にも期待したい。

「ひっぱりいか飯」は1個1300円。4月1日に「淡路屋」各店で販売される。

取材・文・写真/脈 脈子

【取り扱い店舗】新神戸駅、神戸駅、⻄明石駅、鶴橋駅、垂水駅店、⻄神中央店、神戸阪急店、 神戸大丸店、三宮センター街店、芦屋大丸店、⻄宮阪急店、宝塚阪急店、川⻄阪急店、千里阪急店、 高槻阪急店、阪神梅田店、大阪高島屋店、京阪守口店、ラゾーナ川崎