イスラエルによるシリアの首都・ダマスカスのイラン大使館空爆が決定打となり、激化する様相を呈するイスラエルとイランの対立。19日にイスラエルがイラン国内への攻撃を開始したとする一部報道もあり、情勢は緊迫化の一途を辿っています。今回のメルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』では国際政治経済学者の浜田さんが、両国のさらなる関係悪化が日本に及ぼす影響を解説。危機的事態が回避されなかった場合に日本が受ける深刻な被害を考察しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:イランとイスラエルの対立激化が日本に与える影響

イランとイスラエルの対立激化が日本に与える影響

ぶっちゃけ、イランによるイスラエルへの空爆は中東情勢の不安定化に止まらず、世界全体に地政学的な脅威をもたらすことになりそうです。

イランは先にイスラエルがシリアにあるイランの領事部への空爆を行ったことへの限定的な反撃であると説明しています。

しかし、イスラエルは全面的な対決をも辞さない強硬な姿勢を滲ませており、先行きは見通せません。

現時点では、原油価格やその他の金融商品への影響はそれほど大きくは現れていませんが、今後、世界的なエネルギー危機が発生する可能性があります。

日本にとっても、深刻な影響が及ぶことは避けられません。

何しろ、イランの革命防衛隊幹部はホルムズ海峡の封鎖にも言及しているからです。

世界の原油の2割が通過するホルムズ海峡が封鎖された場合には、日本経済は壊滅的な打撃を受けることになります。

日本の原油輸入の97%は中東に依存しているからです。

こうした事態を想定し、日本は全国9か所に石油備蓄基地を設置し、原油の輸入が100%止まった場合でも137日間は対応できる環境を整備しています。

しかし、過去に経験したことのないような緊急事態となれば、どこまで効果的な対応が取れるかは不透明と言わざるを得ません。

リスク回避の観点から東京の株式市場では売り注文が急増し、全面安の展開です。

こうした危機的事態が回避されなければ、原油高もドル高基調も収まらず、エネルギーの輸入依存度の高い日本は輸入インフレを通じた物価高に飲み込まれ、日米金利差の影響もあり、円安基調が続くことになるはず。

既に原油はバレル100ドルに迫り、円安も加速し、1ドル155円直前に迫っています。当然でしょうが、安全パイとして金(ゴールド)への投資が急増中です。

もしイスラエルがイランへの本格的な報復攻撃に踏み込むことになれば、イラン側も報復の応酬という可能性が高まり、事態はますますエスカレートするでしょう。

イスラエルのネタニヤフ首相はパレスチナへの非人道的な攻撃で国際社会から批判を受けているため、そうした非難の矛先をイランに向ける可能性も否定できません。

今回のイランのイスラエルへの空爆はドローン攻撃が主体でしたが、イスラエル軍は飛来したドローンやミサイルの99%を撃ち落としたと豪語しています。

しかし、これはイランの側が国内向けに反撃したことをアピールするのが目的であり、イスラエルの防空網を迂回することには力点を置いていなかったためです。

ぶっちゃけ、イスラエルが報復攻撃を本格化させれば、イランも周辺国を動かし、全面的な地域戦争に突入することになります。

備えを怠るわけにはいきません。

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