声優が一時交代した人気アニメ

 TVアニメの声優は、キャラクターに命を吹き込む重要な役割を持っています。近年、声優への注目は高まっており、「この声優がキャスティングされているから」とキャストで視聴アニメを決める人もいるほど声優はアニメにとって欠かせない存在です。

 なかには諸事情によって急遽代役が充てられるケースも見受けられますが、そういった場合は「イメージが違う」などとマイナスな声があがることも少なくありません。そんななか、急遽代役に抜擢されながらも、ファンからの評価が高かったアニメキャラを振り返ります。

 まずは、声優が変わることの珍しかった1990年代に人気を博したTVアニメ『美少女戦士セーラームーン』(テレビ朝日)の月野うさぎ役です。うさぎは本作の主人公で、『新世紀エヴァンゲリオン』の葛城ミサト役などを担当した三石琴乃さんが演じていました。

 しかし、途中で三石さんが病気で入院されたことにより、物語の終盤からは『ふしぎ遊戯』の夕城美朱などを担当していた、荒木香恵さん(現:荒木香衣)が代役を務めました。

 物語が終盤に迫っていたことで世間の「月野うさぎのイメージ」を崩さないように、代役を担当することは非常にプレッシャーのかかる内容だったことでしょう。

 しかし、そんな不安を感じさせない持ち前の素晴らしい演技力で、TVアニメ第44話から最終回の第46話と、2期として1993年に放送された『美少女戦士セーラームーンR』の第1話から第4話のうさぎを演じ切りました。

 プレッシャーをはねのけ、「月野うさぎのイメージ」を守り切った荒木さんに対して、ファンからは「荒木さんの声が違和感なく、演技力のすごさに驚いた!」と称賛の声があがっています。なお、代役による縁なのか、荒木さんは2期の第14話に初登場した未来から来たうさぎの娘、ちびうさ役で「セーラームーン」シリーズに再出演していました。

 また、主人公を取り巻く重要キャラの声優交代として知られているのが『ONE PIECE(ワンピース)』のナミです。航海士である彼女はTVアニメ放送の第1話から登場しており、『紅の豚』のフィオ・ピッコロ役などを務める岡村明美さんが担当しています。TVアニメ放送開始時からナミを演じていた岡村さんは2001年に産休に入ったことがあり、その際は『ひみつのアッコちゃん』のアッコ(3代目)役などの実績を持つ山崎和佳奈さん代役を務めました。

 山崎さんはナミの義理の姉であるノジコを演じていたため、『ONE PIECE』の世界観に大きな違和感なく臨めたのかもしれません。そんな山崎さんが演じているナミはTVアニメ『ONE PIECE』の70話から78話で視聴可能です。

 そして山崎さんといえば、「週刊少年サンデー」での連載開始から2024年で30年を迎える『名探偵コナン』(原作:青山剛昌)のヒロインである毛利蘭の声も担当しています。『名探偵コナン』で蘭の幼なじみである工藤新一役を演じる山口勝平さんは、麦わらの一味ではウソップを担当していることから、ネット上では「ナミとウソップの会話が蘭と新一になる!」といった盛り上がりも見せていました。

 そんなTVアニメ『名探偵コナン』(読売テレビ・日本テレビ系)においても代役が立てられることがありました。『ONE PIECE』ではトニートニー・チョッパー役を務める大谷育江さんは『名探偵コナン』では円谷光彦(つぶらや みつひこ)を演じています。

 大谷さんは2006年に体調不良で休業されていた時期があり、そのときは『血界戦線』のK・Kを演じた折笠愛さんが光彦の代役を担当し、同年4月に公開された映画『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)』も折笠さんが光彦を演じました。ファンからは「折笠さんの光彦もかわいい」と好評な様子です。

 人気アニメキャラの代役に抜擢された声優は、ファンの期待を超えた演技で高い評価を得ています。「さすがプロの演技」と感じさせられるその力は、今後もアニメファンを楽しませてくれることでしょう。