悲劇の果てに生まれる復讐の嵐

「復讐」がテーマの作品は、どうしてもグロテスクな描写が多くなりますが、積年の恨みを晴らす復讐が成功したら、つい爽快感を味わってしまう人も多いのではないでしょうか。この記事では、悲しい過去によって起きてしまった、目を背けたくなる復讐劇が描かれる「鬱マンガ」を振り返ります。

※この記事は『パンプキンナイト』『十字架のろくにん』『外道の歌』のネタバレを含みます。

『パンプキンナイト』は、『鬼畜島』などのホラー漫画で知られる外薗昌也氏が原作を担当したスプラッター作品です。作画担当でイラストレーターとして活躍している谷口世磨氏の描く生々しい描写も衝撃で、心臓が弱い方にはおすすめできません。

 物語はSNSで謎のアカウント「パンプキンナイト」にフォローされた女子高生の中谷明日美が、無残に殺されるところから始まります。この事件は、学校でいじめられていた女子高生の桐乃尚子による復讐劇でした。

 いじめに加担した人びとを切り刻んだり感電させたりと、じわじわと限界まで苦しめてから殺害していく描写は残酷ですが、尚子の受けた心の傷の深さも伝わってきます。

 そのほか、『十字架のろくにん』(作:中武士竜)は、『パンプキンナイト』と同様にいじめの復讐が描かれる作品です。同作は2020年3月に「別冊少年マガジン」で連載を開始し、2020年11月からは「マガジンポケット」に移籍して連載されています。

 主人公の漆間俊は小学6年生のときに「実験体A」と呼ばれ、同級生5人からいじめを受けていました。このいじめは、実験体Aをどこまで追い詰めたら自殺するのか、というものです。俊には地獄のような日々でしたが、家族という救いがあったために、いじめにも耐え抜いてきました。しかし、最終的に俊は同級生5人によって両親を殺され、弟も寝たきりの状態にさせられてしまいます。

 これが引き金となって俊は復讐を決意し、第二次世界大戦で秘密部隊に所属していた祖父に人の殺し方を伝授してもらうようになりました。そして、4年の月日を経て同級生5人をひとりずつ拷問しながら殺していきます。殺し方の残虐さだけでなく、拷問中の俊の無表情が恐怖を際立たせてくるような作品です。

 同級生5人があまりにもクズすぎるので「殺されても同情できない」という意見が多く出ました。俊が修行している間も更生することなくクズのままなので、復讐に爽快感があります。

 主人公自らが復讐していく作品とは異なり、主人公が被害者の代わりに復讐を代行するのが『外道の歌』(作:渡邊ダイスケ)でした。2014年から「ヤングキング」で連載されていた『善悪の屑』の第2部として、同誌で2023年まで連載されたバイオレンスマンガです。1部の『善悪の屑』は淡々と人殺しが行われていきますが、本作は被害者の視点に加えて加害者視点も事細かに描かれているので、加害者側の身勝手さが浮き彫りになります。1部よりも被害者へ感情移入しやすくなり、精神的にきついと感じる人も多いのではないでしょうか。

『外道の歌』は第1部に引き続き、妻と娘を殺されたカモこと鴨ノ目武と、トラこと島田虎信のふたりが、「復讐代行屋」として未成年や警察官僚の息子など法で裁かれない加害者に罪を償わせていきます。実際の事件を元にしたストーリー展開に加え、被害者、遺族と加害者両方の視点で話が進んでいきました。

 大切な人を殺された遺族が食事をとれなくなる姿や、刑期を終えた加害者を許せない心情の描写に思わず感情移入する人も多いはずです。また、犯人たちが幼い子供を含め自分の欲望のために殺人を犯す場面も描かれ、読み進めれば進めるほど精神が削られることでしょう。