ひとりの声優だけで1作品制作するのも夢ではない?

 長年活躍する声優の種崎敦美さんは、2023年の秋アニメ『葬送のフリーレン』のフリーレンや、『薬屋のひとりごと』の玉葉妃など、人気作に登場するキャラクターの声を担当し、注目を集めています。彼女のように声だけでキャラクターを演じ分ける声優には、ファンならずとも驚かされることでしょう。なかには『ドラゴンボール』で孫悟空、悟飯、悟天親子、さらに悟空の父バーダック、劇場版の敵ターレスの声まで担当した野沢雅子さんのように、同一作品で複数のキャラクターを演じ分けた声優もいます。

 例えば声優としてだけでなく、タレントとしてバラエティ番組でもマルチに活躍する山寺宏一さんもそのひとりです。山寺さんはマンガ『彼岸島』(著:松本光司)をアレンジして制作されたショートアニメ『彼岸島X』の最終話で、ひとりで50キャラを演じました。

 約3分の動画のなかで、山寺さんは主人公の宮本明や敵の吸血鬼のみならず、女性や子供、ガヤのモブキャラの声まで演じ切っているのです。最後にエンディングロールが流れ、キャストの情報が示されます。

 山寺さんが演じたのは人物だけでなく、「豚汁」や「注射器」の効果音まで担当していました。視聴者からは、「もはや山ちゃんは世界レベルの声優でしょう」「山ちゃんひとりいれば経費削減ができそう」などの声があがっていました。

 山寺さんと数々の作品で共演をしているベテラン声優の林原めぐみさんも、複数配役を経験している声優です。彼女が演じたキャラといえば、1995年にTVシリーズが始まった『新世紀エヴァンゲリオン』のヒロイン、綾波レイを外すわけにはいきません。レイ役で彼女は、感情表現の少ない寡黙な役を見事に表現しました。

 また、『エヴァンゲリオン』シリーズでは、「林原さんがいろいろな役を演じている」というのも有名です。主人公の碇シンジの母親ユイの声以外にも、ペンギンのペンペンや、エヴァンゲリオン初号機が暴走した時の声、旧劇場版のエレベーター内にて火炎放射器で焼かれる女性の声などを担当しており、そのふり幅の大きさに驚かされます。

 また『ドラえもん』のスネ夫役や『鬼滅の刃』の不死川実弥役で有名な声優、関智一さんも、アニメ『新テニスの王子様 U-17 WORLD CUP』で、ギリシャ代表の7人をひとりで演じていました。関さんは同じ世代の7人のテニスプレーヤーという、似た特性を持つキャラクターを演じわけています。

 ちなみにYouTubeの「アニメ 新テニスの王子様 オフィシャルチャンネル」では、ギリシャ代表のPVも公開されています。この動画を見た視聴者からは、改めて「全員、関さんなのに違和感がなくてすごい!」「関さんはギリシャ神話の世界を超えた神だ」などの声が出ていました。

※種崎さんの「崎」は、「大」ではなく「立」が正しい表記