ずっと孤独を感じていた主人公

 高校生のタマコは、ひとり暮らしの新生活を始めます。しかし、なぜか借りた部屋には猫の地縛霊「ナナシ」がいました。お祓いをしてもまったく成仏しない、イタズラ好きのナナシとの同居は慌ただしい日々でした。ある日、タマコは親元を離れていることや、顔のアザのことで自分のうわさをする人たちと出くわします。その場では気丈に振る舞うタマコでしたが……?

 吉良いとさん(@kilightit)による創作マンガ『隣の猫が成仏してくれない』がX(旧:Twitter)上で公開されました。いいね数は9000を超えており、読者からは「ナナシは成仏せずにタマコとずっと一緒にいてほしい……」「触れられないけれどつながっているふたりの絆に感動」「数年後、主人公がどうなっていくのかとか気になります」などの声があがっています。

 吉良いとさんは漫画家として活動しており、今作の電子書籍がKindleにて2ページを追加して無料配信中です。

 作者の吉良いとさんにお話を聞きました。

ーー今作『隣の猫が成仏してくれない』が生まれたきっかけや、理由を教えて下さい。

 私は幽霊が登場するマンガをよく描いています。でも「猫の幽霊」がメインのお話は描いていないかもしれない……そう思ったのがきっかけで「猫の幽霊と人が同居するお話」を執筆しました。

 現在猫2匹と一緒に暮らしているので、少し願望が入っていたのかもしません。だけど「そこにいるけど触れない」がもしかしたら一番つらいかも……。

ーー猫の地縛霊のナナシとタマコの関係性がとても印象的でした。今作を描くうえで気を付けたことや、お気に入りのシーンなどはありますか?

 布団で語らう「おそろい」のシーンがお気に入りです。種族も境遇も違うふたりだけど、共通することを見つけるとうれしくなったり、孤独じゃないと感じたり。タマコにとって前向きになれるきっかけになったと思います!

猫の地縛霊と女子高生との不思議な共同生活を描いた『隣の猫が成仏してくれない』(吉良いとさん提供)

ーーナナシとタマコのキャラメイクに対して読者の方から多くの反響がありました。キャラクター制作でこだわった点はありますか?

 あまり暗くなりすぎないよう、キャラ性には気をつけました。タマコのこれまでの人生は、決して明るいものではありません。ですが彼女なりにいまを頑張って生き、過去を悔やんだり誰かを妬んだりすることもありません。その性格を短いお話のなかで感じてもらえるように、コミカルな部分も取り入れました。

 ナナシに関しては「猫らしさ」を大事にしました。手紙を書くタマコにナナシがすり寄るシーン、おそらくナナシはただ構って欲しいだけだと思います(笑)。でもその自由さが、タマコの心を軽くしてくれました。

ーーそのほかにも、たくさんの感想が寄せられています。特にうれしかった感想の声、印象に残った読者のコメントはありましたか?

 ナナシに対して、「ずっと一緒にいてほしい!」というお声を多くいただきました。私もこれまで孤独な経験をしてきたナナシには、これから幸せに暮らしてほしいと切に思っています。また、読者さんが亡くなった飼い猫を思いながらコメントしてくださったのも印象的でした。

ーー今後、挑戦してみたいマンガのジャンルはありますか?

 恋愛ものに挑戦してみたいです。いままでヒューマンドラマを多く執筆してきましたが、恋愛をメインに描いている作品はあまりありませんでした。私なりの恋愛物語を執筆できればと思います。発表の際はぜひお読みいただけると幸いです!