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NIPPON EXPRESSホールディングス<9147>が、同社のCVC(企業が自己資金でファンドを組成し、スタートアップなどに出資する取り組み)ファンドであるNXグローバルイノベーション投資事業有限責任組合を通じて、スタートアップへの出資を加速させている。

2024年に入り4カ月ほどの間に7社に出資しており、同ファンドが活動を開始した2023年の2社と合わせ投資先は9社となった。

デジタル技術で生活やビジネスを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)や、サステナビリティ(持続可能性)の推進に役立つ新しい技術や事業のアイデアなどを持つ企業が対象で、倉庫や循環型ビジネス、AI(人工知能)、家族信託サービス、輸送、菌ケアサービスなど投資先企業の業種は幅広い。

同社では今後も将来性のあるスタートアップと連携し、双方の事業の拡大に取り組むとしており、当面、出資の勢いが衰える兆しはなさそうだ。

ヘルスケア業界での認知度を向上

NXグローバルイノベーション投資事業有限責任組合は、SBIインベストメント(東京都港区)がGP(無限責任組合員)となり、2023年1月に設立されたファンドで、2023年6月に出資した倉庫シェアリングサービスを手がけるsouco(東京都千代田区)を皮切りに、投資事業を開始。

2023年はsoucoのほかにも、衣類などの不要品の回収、選別、再流通に取り組むecommit(鹿児島県薩摩川内市)に出資した。

直近では2024年4月に人の身体に存在する常在菌のバランスを整え、ケアすることで美しさと健康を保つ菌ケアの研究開発に取り組み、こうした研究成果を基に開発した化粧水や美容液などの販売を手がけているKINS(東京都渋谷区)に出資。

NIPPON EXPRESSは、菌の保管や輸送のほか、海外クリニックから国内のラボや保管施設への検体の輸送などに関わることで、KINSの事業拡大を物流面で支援するとともに、ヘルスケア業界での認知度を高め、新たなビジネスチャンスの創出を目指すとしている。

物流業界の社会課題を解決

また同月には輸送ルートの最適化システムを手がけるシンガポールのSWAT MOBILITYにも出資。

SWATの技術をNIPPON EXPRESSの拠点で活用し、配車業務のデジタル化に取り組むとともに、同技術を基に実施した輸送のデータを分析して新しいサービスを開発するのが狙いという。

NIPPON EXPRESSではSWATへの出資を機に、DX戦略を加速し、グローバルで物流業界の社会課題解決を目指すとしている。

このほかにも家族信託の手続きをDX化し、認知症などを原因とする資産凍結を防止するサービスを展開するファミトラ(東京都港区)や、人、車両、倉庫などの最適配置が可能になるAI(人工知能)と量子技術を持つグルーヴノーツ(福岡市)などにも出資した。

NXグローバルイノベーション投資事業有限責任組合は、2023年からの10年間に50億円を投資する。次に来るのはどのような企業だろうか。

年月

NIPPON EXPRESSホールディングスのCVCファンドの動き
2023年6月 倉庫のシェアリングサービス(倉庫を貸し借りする際の仲介サービス)を展開するsouco(東京都千代田区)に出資
2023年10月 衣類などの不要品の回収、選別、再流通などを手がけるecommit(鹿児島県薩摩川内市)に出資
2024年1月 デジタルフォワーディングサービス(貨物の運送の取り次ぎサービス)を行うインドのWIZ Freightに出資
2024年1月 「スキマバイトサービス」を運営するタイミー(東京都港区)に出資
2024年2月 3Dプリント義足事業を海外で展開するインスタリム(東京都墨田区)に出資
2024年3月 AI(人工知能)と量子技術の活用に強みを持つグルーヴノーツ(福岡市)に出資
2024年3月 家族信託サービスを提供するファミトラ(東京都港区)に出資
2024年4月 輸送ルートの最適化システムを手がけるシンガポールのSWAT MOBILITYに出資
2024年4月 総合的な菌ケアサービスを展開するKINS(東京都渋谷区)に出資

※NXグローバルイノベーション投資事業有限責任組合のホームページとリリースから作成

文:M&A Online

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