中小企業庁(東京・霞が関)

中小企業庁の中小M&Aガイドライン見直し検討小員会は、中小M&Aの適切な取引環境の整備を目的としたガイドラインの改訂作業を本格化させる。中小企業庁が6月下旬に提示する予定の修正案をたたき台とした論議を重ね、中小M&A市場の拡大に伴って急増しているM&A支援機関の質の確保・向上などを図る。

M&A支援機関のサポート内容などに不満の声

2020年3月に策定されたガイドラインの見直しは、2022年6月に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ」にも明記された。中小企業庁によると中小M&Aをめぐっては支援機関の手数料の複雑性や納得感、サポート内容への不満が上がっているほか、M&A仲介における利益相反構造への懸念なども聞かれる。

少人数で経験も浅い事業者が大半

中小企業庁が公募した2022年度のM&A支援機関は過去最多の3117件が登録されたが、設立年代は「2020年代」「2010年代」が9割近くにも達する。さらに、支援機関の2割余りはM&A支援業務専従者数が「0人」で、全体の半数は「1〜2人」しかいない。支援機関は専従者数が少なく、業務経験も浅い事業者が大半を占めているのが実情だ。

M&Aによる中小企業の事業継続・成長を促すためには、依頼者の企業が仲介・フィナンシャルアドバイザー(FA)業者との契約内容を正しく理解し、適切な判断の下で契約を締結できる環境を整える必要がある。依頼者と仲介・FA業者との間に認識の齟齬が生じれば当初期待した支援業務の提供を受けられなくなり、紛争にまで発展しかねない。

契約締結前の重要事項説明などが焦点に

こうしたことから、ガイドライン見直しの方向性としては、契約締結前に契約に係る重要な事項を記載した書面を交付するなどして明確な説明を行うことを仲介・FA業者に求めることが論点となっている。また、M&A支援機関の人材育成や倫理観の醸成に関する項目を新設し、重要性を明示するといった案も出ている。

5月17日に開かれた小委員会の初会合では、委員から「契約締結前の重要事項説明はM&A支援機関にとって負担の大きい面もあるが、適正な中小M&A支援を広めていくためには非常に重要」「重要事項の説明内容に不足や虚偽などが発生した場合、宅建業法なども参考として何らかの罰則などの対応ができるか検討することが必要」といった意見があった。

M&A仲介協会のリーダーシップにも期待

また、国内唯一のM&A仲介業自主規制団体であるM&A仲介協会(代表理事・荒井邦彦ストライク社長)に対しても「倫理規定などを作成し、会員に周知を行い、倫理観をしっかり持っていただくことが重要」と、支援機関の適正な業務遂行を監督する役割への期待が寄せられた。荒井代表理事は業界を代表する立場で小委員会の委員に選ばれている。

小委員会はガイドラインの修正案について、早急に見直すべき事項と継続的な論議が必要な事項を分けて話し合いを進める。中小企業庁は7月ごろに開催を予定している中小企業の経営資源集約化等に関する検討会で、小委員会の作業の進捗状況を報告する。

文:M&A Online