前ページのインプレッサに続き、ここではそのSUV版のクロストレックをテストドライブ。試乗コースは、サーキットを飛び出し、一般道から高速道路。そこでの印象を報告する。(Motor Magazin e 2023年6月号より)

ベースグレードと上級グレードとでキャラクターを明確に区別

スバルのベーシックなSUVモデルである「XV」は、独特な存在感を放つSUVとして人気を博した。しかし、ライバルの多いSUVマーケットにおいては、より明確に個性を打ち出さないと埋もれてしまう。そこで、モデルチェンジに際し、さらに個性を際立たせることに注力したという。

XVユーザーを調査したところ、自転車やスキーなど、さまざまなアクティビティを楽しむ人たちが多いということがわかったので、新型は、若者から支持を得られるよう、さらに「アクティブな」クルマとして開発された。

車名を「クロストレック」に統一。際立つには、当然ながらまずはエクステリアデザインが重要となる。とはいえ、プラットフォームなど中身は進化しているものの、XVのパッケージングを踏襲し、ボディサイズやホイールベースはほぼ変わっていないため、ドラスティックなデザイン変更はできない。

興味深いのは、先代では、兄弟車であるインプレッサをベースにSUVとしてかさ上げする手法を取っていたが、もはやそれではSUVらしく見えないということで、今回はクロストレックをベースに両車のバランスを取りつつデザイン開発を進めたそうだ。

ベースグレードのツーリングと上級グレードのリミテッド、2つのグレードを備えるが、質感の違いではなく、キャラの差別化を図っているのも好感が持てる。たとえば、ツーリングには、若い人向けに流行りの「ブラック」を随所に取り入れ、リミテッドにはメタリック塗装のホイールなど「光る」マテリアルを使うなど。

そしていずれもグレーをベースとした明るくカジュアルで実用的なインテリアとなっている。センターディスプレイやメーター類の視認性も良く、ドライバーにとってはもちろん、パッセンジャーにも快適な室内空間となっている。

頭の揺れを抑え目線がブレないため運転がしやすい

「快適」と感じる要因のひとつにシートがある。シートバックにもたれた背中に常に心地良い面圧が感じられる。聞けば、群馬大学医学部と連携して人間工学的な研究開発をしたという。仙骨を抑えると骨盤が立ち、背中全体で上体を保持できて人が動かない。

そんなシート構造になっている。結果的に頭の揺れも抑えることができ、目線がブレないため運転もしやすいし疲れにくく、パッセンジャーも酔いにくい。アクティビティを楽しむ道中も愉しく快適でいたいし、遊び疲れた帰路こそ、気楽に運転したいと思う。そのためには、ハンドリングや乗り心地以前にシートがとても重要となる。

そして、もうひとつ、ロングドライブの強い味方といえば、「アイサイト」だ。こちらも従来から定評があるが、新たに単眼カメラを採用したことで、自転車の飛び出しなどより広い角度を監視できるようになった。

一般道〜高速道路を走ってみたが、全般的に好印象だ。構造用接着剤の使用部位を増やしたことでボディ剛性が上がり、レヴォーグなどで採用している「フルインナーフレーム構造」の採用やサスペンション取り付け部の剛性向上などにより、従来よりも走りの質が上がり、乗り心地も快適。

パワーユニットは、2L直噴エンジンモーター(eボクサー)のハイブリッドにリニアトロニック(CVT)が組み合わされる。けっしてパワフルなエンジンではないが、必要に応じてeボクサーのトルクが助けてくれ、必要十分な加速を得られる。走行時のエンジンとモーターの切り替わりのショックもなく、減速時のブレーキフィールも自然で、加減速の動きが滑らかで違和感なく、洗練されている。パワーユニットの細部に至るまで見直しが図られ、質感の向上が実感できた。

クロストレックには、FFモデルも追加された。軽快さがあり、日常使いだけならこちらでも十分。でも、スバルらしい乗り味を求めるなら、インプレッサ同様にAWDをオススメする。(文:佐藤久実/写真:伊藤嘉啓)