『岸辺の旅』(15)で第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の監督賞を受賞、『スパイの妻 劇場版』(20)で第77回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)に輝くなど世界で評価される黒沢清監督が、1998年に手掛けた同名作品を日仏共同製作でセルフリメイクした『蛇の道』(6月14日公開)。このたび本作のメインビジュアルと予告編が解禁された。

全編フランスロケ、フランス語にて撮影された本作の主人公、新島小夜子役に柴咲コウ。他人の復讐に協力する謎に包まれた精神科医という難しい役どころを、撮影の約半年前からフランス語のレッスンを受け、見事に演じ切った。共演は、第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で審査員賞を受賞した『レ・ミゼラブル』(19)に出演するなどフランスで注目を浴びる俳優ダミアン・ボナールで、殺された娘の復讐に燃える男アルベール役を熱演。

さらに、パリで精神科医として働く小夜子の元に通う患者の吉村役を黒沢監督とは『クリーピー 偽りの隣人』(16)を含む4作品でタッグを組み、日本を代表する映画俳優として国内外で注目される西島秀俊、小夜子の夫、宗一郎役を日本アカデミー賞で最優秀作品賞、米アカデミー賞で視覚効果賞を受賞した『ゴジラ-1.0』(公開中)でも重要な役どころを好演し、映画やドラマを中心に活躍の場を広げる青木崇高が演じる。

解禁したメインビジュアルは、娘の復讐に燃える父アルベール(ダミアン・ボナール)と、復讐に手を貸す精神科医の小夜子(柴咲)の姿が写しだされている。2人の手にしっかりと握られている袋には、人らしきなにかが入っているようだ。アルベールは小夜子の方を、小夜子はこちらを向いており、美しい草原の景色とは裏腹に不穏な空気が漂う。一体、小夜子は何を抱えているのか。柴咲の見たことのない冷たく鋭い視線に胸がざわつくメインビジュアルとなっている。


また、同時に解禁された本予告映像では、アルベールと小夜子が病院で出会い、協力して犯人と思われる男を誘拐、監禁し、徹底的に復讐を実行していく様子から始まる。「長かった復讐もゴール間近ね」とつぶやく小夜子に対し、アルベールが「君の協力のおかげだ」と感謝を伝え、この復讐は終わる、はずだった。次のシーンで、娘の死はある組織の陰謀によるものだということが明らかになると、物語は一気に加速していく。小夜子の患者である吉村(西島)は処方された薬を飲み「まさかこれ毒じゃないですよね」とニヤリと不気味な笑みを浮かべ、さらに小夜子の夫、宗一郎(青木)もオンライン越しに登場するなど、復讐と並行して小夜子の身の回りで奇妙な出来事が起こっていることが垣間見え、「そろそろゲームを終わらせましょう?」という小夜子の台詞で予告は終わる。復讐の果てに待つ、衝撃の真相とは一体何なのか。

美しいフランスのロケーションに息をのむと同時に、得体のしれない緊張がラストまで続く本作。類を見ないほどの徹底的な復讐の最後に待つものは一体何なのか。色褪せることのない、一層鮮やかに色濃く描かれる『蛇の道』をスクリーンでぜひ見届けてほしい。

文/山崎伸子